スパイウェアは脅威か
新聞休刊日である。社説ネタ以外で気になることもいくつかあるが、なにげなく読んだ「IT Pro 米国最新IT事情:あなたも見張られているかもしれない ― スパイウエアの脅威」が気になった。もっとも気になったのは標題にあるようなスパイウエアの脅威ではない。記事はざっとスパイウェアの概略と最近の話題などをちりばめて書いたお作文といった趣向に過ぎないのだが、後半、次のくだりで異次元に突入するのだ。スパイウェアについてこう話が進む。
これらが一体どんな悪戯(わるさ)をしているのかは,大抵のユーザーにはよく分からない。それが分かる位の人なら,そもそも最初から,こんな物に取り付かれたりはしない。下手をすると銀行口座のパスワードを盗まれてもおかしくはない。またスパイウエアはOS(基本ソフト)の奥深く付着し,その設定を変更してしまう恐れもある。パソコンの動作が妙に遅くなったな,と思い当たる節があれば,それは悪質なスパイウエアのせいかもしれない。
なんとも嫌ったらしいクリシェで固めた文章だが、この後半技術的なコメントが奇っ怪。「OSの奥深く付着し」ってなんだ? デスクはこの文章でOK出したのか? その先話はこう続く。
かく言う私もその一人だ。これまで私は,かなり無頓着にフリー・ソフトをダウンロードしてきた。最近,やたらとパソコンの動きが鈍いのは,そのせいではないかと思う。そこで一つ,対策を打った。アンチ・スパイウエア・ソフトをインストールしてみたのだ。ハード・ディスクに潜んでいるスパイウエアを探し出して,消去してくれるソフトである(やはり何種類もあるが,私が使ったのはinterMute社のSpySubtractである)。
パソコンの動きが鈍いからといってスパイウェアってフツー考えるかぁ? ま、そういうわけで、体験談に話が切り替わるのだが、これがスゴイ。
これを私のパソコンで走らせてみると,出るわ出るわ,何と100個以上のスパイウエアが検出された。今までよく無事でいたものだと,我ながらあきれるやら,ほっとするやら。何はともあれ,さっそく全部消去した。
重要な情報を扱う機会の多い読者の皆さんも,気づかないうちに誰かに見張られているかもしれない。思わぬ被害に遭わぬように,スパイウエアには十分ご注意いただきたい。
私は絶句したね。この記者大丈夫か? 別にスパイウェアのことを心配したのではない。技術の基礎がまるでわかってない記者についてだ。と、記者の略歴を見ると…、あれれ、小林雅一さんって日経BPの記者さんではないね。「隠すマスコミ、騙されるマスコミ」の著者さんか。じゃ、しゃーないか。経歴は技術系だけど、それはインターネット以前の時代。IT関連の書物もあるけど、それほど技術で裏打ちするタイプのライターさんではない。「隠すマスコミ、騙されるマスコミ」は私も読んだけど、当たり前な話が多く、新書にありがちなちと退屈もの。9.11以降のジャーナリズムに言及しているわりにブログの話はねーし、日本にいる外人記者さんたちの差別意識やご乱行や低脳を暴くわけでもない。とま、くさすわけではないけど、どっちかというと一般向けのライターさんというかジャーナリストさんなら、スパイウェアがわかってなくてもしかたないか。でも、デスクはしっかりせーよとは思うけどね。
話をちと戻すと、だいたい一つのマシンから100個もスパイウェアが出てくるわけねーよ。出てきたのはトレーサブルなクッキーだよ。これも嫌ったらしいシロモノだが、「あなたも見張られているかもしれない」っていうほど大仰なものじゃない。固定IPだとほっておけばダブルクリックとかにかなりデータが溜まるが、こいつら日本法人があってもそれほどマーケットに活かしているっていうものでもない。午前10時にエッチな閲覧者が多いってな情報が集まるくらいなものだ。
もう一つ気になったことがある。なんでSpySubtractを使っているのか、だ。フツーはAdawareかSpybotあたりを使うんじゃないか。なぜかなと思って、SpySubtractのトライアルを落として自分のXPマシンをチェックしてみると、ぎょっ、オンメモリになんかいるという警告が出る。腰が抜けましたね。まったく人のこたー言えねーよです。で、見るとなんのことはないWildTangentでした。厳密にはなんのことはないとも言えないが、アンインストール忘れですね。3Dポリゴンの虎パンツ金髪おねえさんがダンスするのを見た罰ってやつです。
他はSpySubtractのメリットはよくわからん。こいつご親切に常駐しやがるので、即アンイスント。ついでに最新版のAdawareとSpybotでざっと舐めてみたが、どってことはない。
なんだか小林雅一さんをおちょくったような話になってしまったが、ネットランナー以外のパソコン系のライターもFlashGetのお薦めとか書くし、DivXのレジストをちゃんとお薦めするのなんて見たことねーし、なんだかなである。
スパイウェアはなんとなくだが、日本ではあまり問題にならないだろうと思う。インターネット分野のマーケッティングの力が日本はげろげろに弱過ぎる。だいてい、サーチエンジンがgoogle一色になっちまったのに、これを悲しみ恥じるエンジニアがいねーのだ。日本国の行く末やいかんと思えども、googleの意義を小林よしのりに説明するわけにもいかないしな。
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