« 珠海買春者を中国で処罰させればいい | トップページ | スパイウェアは脅威か »

2003.10.13

朝日新聞が提唱するアラブ大同団結の薄気味悪さ

 今朝の朝日新聞社説「アラブ世界 ― 危機になぜ動かない」は薄気味悪いシロモノだった。馬鹿だなで済まされるならまだいい、また左翼思想かよでもお笑いの部類だ。だが、この社説はもっとぞっとするものだった。
 社説の韜晦な文章から要点を抜き出せば、結局はこうだ。中東の二つの危機であるイラクとパレスチナ問題を解決するには、アラブ世界の協力が必要だ。それを実現したくても、アラブ世界を構成する諸国は米国に対して利害が調整されていない。ここは一番、米国よりもアラブ世界を重視し、イラク自立のため、「一日も早く新政権を立ち上げさせ、米英軍を撤退させるために」という大義のもとに大同団結せよ。
 またまた反米左翼かよでは済まされないものを感じる。アラブ世界が団結して米国と戦えとけしかけているのだ。アラブ世界の良識ある人なら鼻でせせら笑って終わりかもしれないが、なんでこんな非常識な意見が日本の新聞社説で出てくるのか。ことの発端は、エジプト新聞アルアハラムのエディトリアルをぱくってみたかったというたわいのないことかもしれないが、ナセルのいたエジプトという歴史を抜きに主張だけ日本でも言ってみるという幼稚な態度でいいのだろうか。
 例えば、以下のような朝日新聞社説はどうういう了見なのだろうか。


 注目したいのは、湾岸のアラブ首長国連邦が周辺国に対して、イラクの復興支援にともに取り組もうと呼びかけたことだ。「一日も早く新政権を立ち上げさせ、米英軍を撤退させるために」というのである。
 イラクの混迷が長びけば難民やテロの流出で周辺にも悪影響が及びかねない。そうした懸念もあってのことだろう。
 呼びかけに同調できない国もあるだろう。しかし、米国との距離の違いを超え、イラクの将来についてアラブ独自の構想を練ってみるべき時ではなかろうか。パレスチナ問題も同様である。
 アラブ諸国が域内の紛争解決に力を発揮したこともある。泥沼化したレバノン内戦を89年に終わらせたのは、サウジアラビアをはじめとする国々の調停だった。

 率直のところ、こうした文脈が私にはよく理解できない。アラブ首長国連邦が反米的な主張するというのはわからないではない。その尻馬にのって朝日が反米の旗を振るってみたい気持ちも理解はできる。だが、サウジアラビアつまりサウジ王家を抜きにアラブ世界が構成できるわけでもなことは、「サウジアラビアをはじめとする国々」でわかるとはいうものの、いつのまにか、反米アラブにサウジを含めているのは、文章の詐術ではないのか。
 もう少し突っ込んで言えば、朝日がサウジ王家をどう見ているのかが文章の表面にないことが韜晦の原因になっている。朝日新聞はアラブ大同団結とか言う裏で実際は親米サウジ王家打倒を呼びかけたいのだろうか。そう推測してなんだか脱力する。そんなことをすれば混乱がひどくなるだけだ。
 確かにアラブ世界の不安要因を作り出したのはサウジ王家だ。イスラム原理主義と一括にするのは今後重要になるトルコの情勢を根本的に誤解する危険性があるので、アラブ世界におけるイスラム原理主義と限定したほうがいいが、これを育て上げたのは、サウジ王家だ。救いようがないほど富を蓄積し内政を破綻させた王家は、その口すすぎにワハブ派神学校を多数建設してきた。ここからビンラディンなどが出てくる。日本人は変だとは思わないだろうか、アフガニスタンのアルカイダの構成員が実際にはサウジやエジプト出身者であることを。
 サウジ王家を潰せというのは幻想にすぎない。実際に潰せるのは米国だけだからだ。だが、王家がなくなれば、ワハブ派もパトロンを失って衰退する。反米の急進性に実際的な力もなくなるだろう。
 朝日新聞社説のようにアラブ世界を反米に大同団結させることよりも、アラブ世界が持っている根元的な問題、つまり、民主化と近代化をバランスよく推進することが、結果としてこの地域を安定させるはずだ。
 それに米国の施策が向いているかといわれれば、米国もまた矛盾しているのだが、それでも反米で団結しても、アラブ世界の問題は覆われていくだけだ。

追記
 14日の共同通信によると、国営サウジ通信ソースとして、サウジアラビアの内閣である閣僚評議会は今後1年以内に地方の自治評議会の選挙を実施するとのこと。定数の半数が選出されることになる。

|

« 珠海買春者を中国で処罰させればいい | トップページ | スパイウェアは脅威か »

「時事」カテゴリの記事

コメント

朝日サヨク志低し。産業革命中のロンドンと今の日本はちがう。

投稿: 毒蝮 | 2010.01.11 03:38

 大同って、大同会っていう暴力団とか、洗脳だとか、犯罪に結びつきやすくて朝日の品位を落としてしまうと思う。

投稿: 合同団結 | 2012.07.23 21:18

 そういえば山陰で十年ほど前、出雲市と米子市の暴力団大同会の報道がなされていましたが、その後どうなったのかまったく報道が無い。今どうなっているのか、こういった方面では安定化が進んでいるなどの報道があってもいい。山陰中央新報は朝日の受け売りで分析も甘く、島根鳥取両県民に必要な情報を与え切れていないような疑念も抱く。

投稿: 大社町民 | 2014.04.23 23:21

 従軍慰安婦問題の朝日新聞の訂正記事は、ガキの問答だとおもった。どれだけ日本人をお前らは貶めたのか計り知れない。毒朝日のつく読み物は一生読まない。ついでにアサヒビールも一生飲まない。

投稿: アンチ朝日 | 2014.09.28 19:05

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 朝日新聞が提唱するアラブ大同団結の薄気味悪さ:

« 珠海買春者を中国で処罰させればいい | トップページ | スパイウェアは脅威か »