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2003.10.12

珠海買春者を中国で処罰させればいい

 日経新聞社説「りそなの巨額赤字をどう考えるか」が多少気になった。この社説自体はどうという話でもない。私はりそな問題について2点気になっている。1つは公的資金注入の決定が国家的な詐欺だったのではないかということ。つまり、その時点で破綻が明らかになっていたのではないか。もう1点はりそな問題はすべてスケジュールどおりだったのではないかということ。最初から潰す予定の銀行をりそなに固めて潰したのではないか。ただ、全体として見れば、この政策は巧妙かつ効果的だったとも思う。この問題は気になるが、今日はもっと卑近な話題を扱う。

 中国広東省で日本人団体客(社員旅行)が集団で買春行為をしたとされる問題についてだ。やや旧聞に属する。というのも私はこの問題にまったくといってほど関心がなかった。珠海の売春は事実上公認されているのに問題化したのはまたぞろ日本狙いの中国の思惑以外ありえないからだ。現在でも、基本的にはその線で考えているのだが、気になったのは、事実関係だ。その日本人客による売春はてっきり事実だろうと思っていたのだが、ふと気になって詳細のニュースを後読みするに、どういう事実だったのかはっきりしない。なぜなのだろう。
 国際的な問題となるのは先月28日外交部の孔泉スポークスマンによるアナウンスメントのようだ。朝日系のソースによれば、「これは極めて悪質な違法案件だ。中国側の関連部門が現在調査中であり、法に基づいて厳しく処分されることになる」と説明したとのこと。この時点での事実関係は、16日に広東省珠海市の日本人団体客が集団買春したというだけのようだ。
 その後、今月7日になって福田官房長官は、5日の時点で、広東省政府から「そういう行為が事実としてあった」との報告を受けた旨、言明している。福田によれば、買春の規模ついての話はなかったらしく、曰く「仮にこういうことがあったとすれば、極めて遺憾だ。関係する日本企業に、外務省が事実関係を聞く」とした。
 中国側でも処分が検討され、日本側でも外務省が動くことになっているのだが、さて、その後の動きがよくわからない。9日毎日新聞「集団買春疑惑:企業への聞き取り調査公表 外務省」によれば、8日に外務省がこの社員旅行の会社に問いだたし、日本側は組織的な買春ではないとした。


社長は、9月16日に広東省珠海市のホテルでパーティーを開いた際、中国人女性コンパニオン約200人が同席したことを認めた。しかしパーティー後、男性社員が宿舎である別のホテルにバスで移動した際には、女性は同乗しなかったと説明。その後の社員の行動については「個々の社員の自由であり会社として把握していないが、調査している」と説明したという。

 そして、外務省としては、社長に「組織的に行われたことではなくても、海外で女性の尊厳を傷つける行為があったとすれば遺憾であり、会社として個人の行動についても配慮すべきだった」と返答したらしい。
 なんじゃそれ? というのが今回この話を書こうと思った動機なのだが、常識的に考えれば、コンパニオンがやってきた時点で買春のアポは取れている。組織的でないわけはない。だが、それだけのコンパニオンの動きを広東側が把握できないわけでもない、どころか最初からこれは一種罠というか政治カードに使えるかどうかストックされていたのではないか。陰謀論的に考えれば、これは中国人による福岡市民の虐殺とのバーターが思い浮かぶ。
 ネットでもう少し調べると「人民網日本語版」(2003年10月10日)に次のようにある。

――中国政府は、日本に当事者の引渡しを求めるのか。

この問題は中国民衆の強い憤りを引き起こした。中国メディアの報道やインターネット上での民衆の反応を見れば、中国民衆の強い反感や憤りが理解できるはずだ。日本政府が国民に対し、海外で現地の法令を守るよう教育を強化することは、日本のイメージアップにも役立つだろう。中国当局が関連部門の処分を実施した。(編集TS)


 率直な印象をいえば、むかつくなぁ、である。当初から中国民衆とやらの怒り誘導が見え見えではないか。そして、中国内の関連部門を処分とは笑わせる。ずばり日本に当事者の引渡しを求めるべきではないか。日本側も、個人的であれ買春したやつら全員お縄にして中国に渡せばいいではないか。犯罪なんだから。でも、結局、そうしないのだ。それが、むかつくなぁである。無実でオーストラリアに10年以上拘束されている日本人を見捨てることができる外務省なんだから無慈悲なことはお得意じゃないのか。なお、これは通称「メルボルン事件」(参照)。
 こういう中国流の言っていることと意図していることの違いに、中国側の思うつぼで対応する外務省ってなんなのだ。日本は法治国家なんだから、法治国家という筋を通せばいい。
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ワイルドスワン
 こうした問題が第三者からどう見えるのか、日本語版ニューズウィーク(10.15)「知られざる『買春大国』の闇」が興味深かった。インチキ写真まで掲載して日本の戦争犯罪をがなりたてるニューズウィークにしては問題の背景側を手短にうまくまとめていた。中国史を知る人間にとって中国の買春が「知られざる」と言われると鼻白むだけだが、今回の問題だって、200人をさらっと動員できる中国社会の病巣も問題だ。この問題の背景には、日本のフェミニストたちが触れているのを読んだことはないが、中国における女の意味をきちんと社会科学的に考察すべきだと思う。そんな研究を待っていられないというなら、「ワイルドスワン」を読むだけでもいい。同書は真の意味で傑作なのだから、高校生くらいの必読書にすべきだ。

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