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2003.10.01

毒ガス兵器は裁判以前にさっさと処理するが吉

 日経新聞を除いて各紙、旧日本軍が遺棄した毒ガス兵器で被害を受けたとする中国人の訴訟を扱っていた。これが大きな問題なのか、そもそも問題がなにか、率直のところ各紙社説を読んでも皆目わからなかった。当然、私に独自な視点があるわけでもないが、この変な感じについて記しておきたい。
 事態についてはあえて産経の冒頭を引用したい。


 旧日本軍が戦争中に持ち込んだ毒ガス弾で戦後、被害を受けた中国人が、損害賠償を求めていた訴訟で、東京地裁は原告十三人に約一億九千万円を支払うよう国に命じた。「国は(毒ガス弾の)調査や回収を中国政府に申し出ることが可能で、被害防止のための措置を委ねる作為義務も怠った」というのがその理由だが、果たしてそうか。不可解さが残る判決だった。

 産経の視点に賛成するというものではないが、朝日新聞の社説はすでに左に振り切っていて娯楽なのか脅迫なのか判別しがたい。

 戦後すでに半世紀余が過ぎ、日本では戦争の記憶が遠くなりつつある。いかに多くの犠牲を払って平和を手にしたのか、それすらもつい忘れがちだ。
 そんな私たちに、時間を超え、過去が迫ってくることがある。旧日本軍が中国東北部などで捨てた毒ガス兵器や砲弾が今も住民の健康を害し、命を奪っている問題はその一つだ。
 工事現場で毒ガス入りのドラム缶が見つかり、ふたをあけると中から液体が噴き出す。液体がついた人々の皮膚はただれ、呼吸困難で入退院を繰り返さなければならない。砲弾の爆発で即死した人もいた。

 なんだかなである。実はこのなんだかなというか朝日新聞社説の偽善ウキウキ感がすでにこの当の事態にまつわる問題を示唆している。正直言って、そういう朝日の口上にはうんざりなのだ。そのうんざりを実感するために朝日新聞にもう少し耳を傾ける。

 被害に苦しんでいる人には何の落ち度もない。普通の暮らしを送っていたところ、突然、旧日本軍の捨てた毒ガスで悲劇にあったのだ。
 毒ガスはかつての侵略戦争の「負の遺産」にほかならない。日本人自身が背負い、解消していくしかないものだ。

 だが、これは筋の通った話ではない。産経のほうが理が通っている。

 わが国は、昭和二十年八月、連合国のポツダム宣言に基づいて無条件降伏した。そのポツダム宣言は降伏の条件の一つとして、完全なる武装解除を挙げ、日本軍は毒ガス弾を含むすべての武器・弾薬、施設を没収された。武器・弾薬、施設などについて、日本国、日本軍は所有権、管理権が及ばなくなったのである。
 一方で、平成七年四月に批准された化学兵器禁止条約は、「一九二五年以降、いずれかの国が他の国の領域内に、その国の同意を得ないで、遺棄した化学兵器を遺棄化学兵器という」という趣旨の定義をしている。現在中国にある旧日本軍の毒ガス弾は、中国の同意を得ないで遺棄したものではなく、連合国に没収されたものであり、“遺棄化学弾”に該当するのかどうかは疑問がある。もし中国側が遺棄化学弾だというならば、それらが遺棄されたものであることを証明しなければならないだろう。

 とはいえ、事態については、産経がいくら「正論」を述べても、現実問題としては読売新聞社説が次のように言うように日本が毒ガス兵器を回収したほうがいいということになる。

 だが、どのような司法判断が下されるにせよ、毒ガス兵器の回収は急務だ。
 その数は、日本政府の推定で、約70万発にも上る。回収作業は、97年に発効した化学兵器禁止条約と、その後の日中間の覚書で、2000年から始まり、2007年までに処理することが義務づけられている。総事業費は、数千億円に達する見通しだ。

 話をごちゃごちゃさせるようだが、だったらなぜこの裁判があったのか? 常識的に考えれば、結局またぞろ左翼イデオロギー論争なのだ。あーもう勝手にしてくれだ。このあたりのウンザリ感を読売社説も反映しているし、私もそれに共感する。
 左翼や朝日新聞はこの裁判の動向でウキウキしているのだが、実際の日本人庶民にしてみると、別に毒ガス回収作業や補償に反意なんかない。費用は巨額だが銀行にもっと莫大な無駄金突っ込んでも平然しているほど大人になった国民なのだ。
 それよりもうこの手の話題にウンザリということが重要だと思う。左翼は国民のウンザリ感がよくわかっていないようだ。ことさらに恐怖をかき立てさせて見せても、正義や平和で庶民を啓蒙しくさってくださっても、ウンザリする悪循環だ。やるだけ2ちゃんねる的ウヨがちまたにあふれ出すくらいだろう。

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コメント

この記事を見たとき、最初は(タイミング的にも)「この毒ガス自体嘘なんじゃないのか?。」と思いましたが、実際今になっても半信半疑です。それが本当に日本軍が作ったもので、国の記録にはっきりとそこに「遺棄した」と書かれ、毒ガス弾の出所が確実に日本だと言えるのなら、謝罪ぐらいはいいでしょう。でも損害賠償となるとちょっとまてと言いたい。ならば日本に落ちてるアメリカ軍の爆弾や焼夷弾の不発弾で日本人が死んだら、アメリカは賠償してくれるのか?。それはないですよね。そもそも日本はアメリカに賠償なんか求めないし、実際不発弾が見つかっても負の財産だなんだと騒ぎ立てない。
なのにどうして日本だけが損しなきゃなんないんでしょうか?。すごく腹が立つ。
自分の国の危険物ぐらい自分の国で調査して処理するのが当たり前だし、最近の中国や韓国を見てると、ほんとに子供の国だな、日本に尻を拭いてもらわなきゃなんにもできんのかい、駄々っ子と同じだ、と思います。
日本の悪口を書き立てる朝日やサヨクに言いたい。日本が嫌なら日本から出て、中国でもアメリカでもどこでもいけばいい。そして日本の悪口を周り言いふらせばいい。たぶん相手はこういうでしょう。「なぜ日本人は自分の国に誇りをもたないのか?。」

 

投稿: シンヤ | 2005.07.30 13:14

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