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2003.09.07

沖縄航空自衛隊員の事故死を悼む

 この問題はあまり触れたくない。だが、触れたくないことだからこそ、少し触れておこうかと思う。産経新聞社説で「空自隊員爆死 個人の武器市場の壊滅を」としてこの問題を扱っていた。


 平成七年のオウム事件では、陸上自衛隊第一空挺(くうてい)団のオウム隊員が、空挺団長誘拐を計画していたが、自衛隊は警察から通知されるまでまったく知らなかった。その時の教訓が生かされていなかったことになる。納税者はモラルも緊張感も高い自衛隊を求めている。自衛隊は事件を機にこの点を再度確認してもらいたい。

 というふうに右よりな道徳論だけで、沖縄という背景をすっぱりと切り落としていた。産経新聞が無知なのか、そこに触れるのをびびったのか。おそらく無知なのだろう。当の問題の背景には、沖縄の問題が潜んでいる。
 ある程度沖縄に詳しくなった人間なら誰でも知っていると思うのだが、沖縄では米軍の流出品は街中でも路上でも売られている。つい最近までひめゆりの塔の前の店ですら販売されていて、さすがにそりゃないだろうということで自粛の対象になった。のんきな話でもある。建前と本音(実態)の分離の激しい沖縄だが、こういうことは日常に組み込まれていて、もはやどっていうことでもないのだ。この「どってことない」という奇妙な生活感はわからりづらいかもしれない。沖縄では「しっちゅう」街中で不発弾処理を今でもやっていることすら知らない人は多い。米軍の演習場もけっこう簡単に出入りできる。
 個人的な話だが、私はほとんどの軍事品には関心はないが、米兵の携帯食(参照)には関心があった。なかなかのものである。まずいという人もいるし、お世辞にもうまくはないが、誰も一度はあれを食ってみるべきだろう。と、つい余談が多くなってしまったが、この手のものを販売している店のなかで、彼のお店はあれだったかなと思い巡らした。国道沿いの小さなポンコツ品マーケット。もっとも、そんなものはたくさんある。誤解ないように強調すれば、このような危険物が販売されていることは例外だ。店頭に銃弾が飾ってあっても誰もそこに爆薬が入っているとは思っていない。
 現状まだ十分に調べが進んでいるわけではないので、奇っ怪な背後関係が出てくる可能性はある。だが、航空自衛隊那覇基地所属の田村多喜男空曹長(享年53歳)にしてみれば、退職後を意識した金儲けがメインだろうが、けっこう楽しみのコレクションでもあったことだろう。彼がコレクションを開始したのは20年も前になるという。すでにその楽しみが日常になっていた。なにより、北海道出身の彼はこの20年を沖縄で過ごしていたわけだ。沖縄が気に入っていたのだろう。あるいは沖縄から出られなくなっていたかもしれない。仲間とのつながりもその兵器だったようだ。自衛隊にいられる期間はもう長くはないだろうし、実際帰るべき故郷ももうなくなっていたことだろう。
 勝手な思い込みで同情しても始まらないと批判されそうだが、私は田村多喜男空曹長の運命を残念に思う。その人生は、我々が本当は理解しなくてはいけない日本の戦後史でもあるはずだからだ。

追記

翌日朝日新聞社説は「武器隠匿――米軍ルートの徹底解明を」はこの問題を扱っていた。内容は、ようは規制を強化することと米軍非難。朝日新聞は欺瞞で狡猾だ。沖縄の米軍問題とは沖縄の問題でありその根は本土(日本国)の問題である。そこを避けるために沖縄だけではないというようなことを言う。朝日新聞は沖縄との関わりが深く、その内実に実は詳しい。ちゃんと自前で調査した内容を書け、と言いたい。

最初「アパート暮らしということだから、独り者だったのかもしれない。」と書いたが、家族はいた。

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