年金改革には必然的に痛みが伴う
坂口厚生労働相が年金改革の試案を出したことを受けて、朝日新聞と読売新聞が社説で触れていた。視点は違うがどちらも外してはいない。基本的に年金問題はわかりやすいようでいてわかりづらい。理由はごく簡単で、問題の矛先を国民からそらす修辞がいくらでも可能だがそれが問題の本質を誤らせるからだ。厚労省官僚の実態・年金基金の運用の批判は必要だが、構造的な改革には結びつかないし、身近な点では国民年金未納者の状況を変える手だてにもならない。
朝日新聞社説「年金改革――坂口試案も物足りない」は曖昧なトーンだが、国民年金未納者を糾弾しない以外、議論の筋道は間違っていない。
若い世代が信頼できる年金制度にするためには、やはり制度そのものを全面的に改革する必要がある。
4日に出された社会保障審議会・年金部会の意見書案は、現行方式の改善案のほか、将来の方向として全国民が加入する所得比例年金に切りかえるスウェーデン方式と、基礎年金を全額税で賄う税方式の二つの案を併記したにとどまった。それだけ利害の調整が難しいということなのだろう。
ここをもっとしっかり展開すべきだ。
- 「所得比例年金」つまり、金持ちに国の年金を負担してもらう。潤沢な老人の年金は減らす。
- 「基礎年金を全額税で賄う税方式」つまり、消費税を20%近くまで引き上げる。
どっちかの解答しかないし、どっちも採用せざるを得ない。そういうことなのだ。
さらに、実際はこれからの日本社会からは事実上年金受給年齢が高齢化する。すでにドイツではそういう転換が進んでいる。長寿国日本では70歳になるだろう。
人間が実社会での仕事ができるピークはせいぜい60歳くらいだから、そこからの10年とその後の余命の10年をどうやって食っていくかが、これからの日本人の大きな課題になる。とはいえ、これも結論としては、大半の人間は貧しくなる以外ないのだ。
今回の坂口厚生労働相が年金改革の試案にはよくわからない点もある。約147兆円の年金積立金を95年間かけて取り崩し給付に回すということはどういう影響を国民経済にもたらすのだろうか? 累積赤字3兆円といった官僚の失態を帳消しにするといったことはさておき、95年という期間が数値の上の議論だけで生活上の実感が伴わない。
この問題、つまり、年金積立金の切り崩しにはなにか裏があると思うが、わからない。陰謀論的な推論をしてもしかたがないので、今日はここまで。
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コメント
先日、「後期高齢者は税金泥棒」という、もう当たり前のようになってしまったフレーズを、19才年下の彼から聞いて愕然としました。・・・いや、25才の男でなくても、団塊世代にして既にこの言葉の阿呆さ加減が分かっていない。・・・人間は、というか子や孫は、戦争を体験した祖父母の、老いてゆく知恵と言葉、その姿から、真実を学んで社会に巣立ってゆくものだったのに。・・・何がどこでどう間違って、「勤労できる若さが全て」という世の中になったのか、私には皆目分からないです。・・・「姥捨山」じゃないけど、「年寄り」を社会から排除したら、子供はダメになりますよ。・・・それでなくても、「動けない」人間が家の中にいるのは「いい事」なんです。「思いやり」ってまずそこから始まるものだから。
投稿: ジュリア | 2009.12.27 06:17