ようするに円高は避けられない
内閣人事があったのだから社説で扱うというのはわからないでもないが、各紙しみじみつまらなかった。なぜ実績のない安倍晋三幹事長の起用を批判できないのか。大衆の人気をあてこんだおべんちゃらの各紙社説は不快極まる。他、気になるところでは、朝日新聞社説が「ネパール ― 流血を止めるため動け」としたネパールの問題。朝日の論調は単なる左翼だから王政批判というだけで深い意味はないのかもしれない。私自身が気になったのはネパール国民の健康状態だ。記憶ではあそこは日本脳炎が多いのだがそういう点にこそ日本は寄与できないものだろうか。
避けるわけにもいかない話題はやはり円高なのだが、扱っているのは日経社説「急激な円高進行を懸念する」のみ。しかも、内閣人事のおまけのような扱い。まぁ、円高なんてまだたいしたもんだいじゃないというオチがなのか。内容は迷走している。まず冒頭まとめが入るのだが、これがそもそも歯切れが悪い。
円が急騰している。22日の東京市場では一時、1ドル=111円台と前週末より4円近く高い水準となった。20日に開いた7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議で、為替相場を巡る日米の溝が浮かび上がったことがきっかけだ。急激な円高はようやく上向き始めた景気を冷やす要因になりかねず、通貨当局には警戒を怠らないよう求めたい。
日銀の活動が抑制される動向にあるのに、日経ともあろうものがなに言っているのだろうと疑問に思うが、この当局っていうのは米国のことなんだな。ようは、円高を容認すると米国の長期金利が上昇して経済成長が鈍りまっせ、というお節介ごかしっていうやつだ。この期に及んでまだ米国経済の向上に打開策を求めるというのか、おい、正気かっていう感じだが、それじゃ困るから日銀介入させてくれよぉ、っていうことなのだ。アホか。
結論はスゴイ。
もちろん、根本的な問題は為替にあるわけではない。米国が世界経済の唯一のエンジン役になり、日本や欧州がこれに頼るという状況が長年続いてきた結果、大きな収支不均衡が生まれてしまった。不均衡の解消へ向けたマクロ政策や構造改革が各国に求められている。
支離滅裂。「各国」ってどこの国なんだ。中国ははずせないなら、結局人民元切り上げってことか。なんだか、二日酔いみたにくらくらしてくる。酔い覚ましはないものかと朝日のマネー情報を見るとケン・ミレニアム株式会社森田謙一による「G7が円高間接的な誘導をした意味」が面白かった。引用は避けるが、ようは、昨日の円高は小泉再選にむけて「安穏として改革を進めないと容赦しねーぜ」という米国側からの脅しなのだそうだ。なるほどね、ってうなずくな。これって田中宇風エンタテイメントかもしれない。
以上、くさし多く、駄文になってしまったが、日経社説の迷走は円安が阻止できないという悲鳴なのだ。ただ、この20年間の経験を思い起こすに、奇妙な要因が重なってことは思い通りにはいかない。ITバブルの再現ということはないだろうが、案外米国経済の持ち直して(そして日本が沈没して)、モデレートな円高って目もあるかもしれない。外貨預金を売り払うチャンスはかくしてまた逸する。
追記
なぜ安倍晋三幹事長の起用を批判すべきか。一つ目の理由はこの人、なんも政治の実績というものがない、つまり、仕事をしていない、ということ。一般的には拉致問題で強行っぽい言動をしたが目立っただけ。メールマガジンの発行なんか業績には入らない。近年の活動(参照)をみても、なんにもしてない。こんな人を重職につけてはいけない。ついでに岸信介(参照)の再評価ブームに乗るマスコミの風潮もくだらない。
二つ目の理由は、小泉が一時期の安倍晋三の人気を自分の人気に利用している点。もちろん、実際の政治の場でそれが悪いわけではないが、安倍晋三の起用は単純にそれだけなのであまりに浅薄。もっとも、自民党的には寝返り青木が出した選挙対策の山崎更迭というだけの話。いつまで続く森内閣…あ?小泉内閣なのか、というお笑いは以下。
平成12年4月13日 森喜朗新首相が故安倍晋太郎氏の仏前に就任報告森首相が、安倍晋三代議士の東京宅に訪れ、父の故安倍晋太郎の仏前に、総理就任のご報告をしてくださりました。森首相は、旧福田派安倍派に所属され、「晋太郎氏を人生の先輩と仰いできた」とのことでした。報告後、「首相の責任の重さを感じているが、安倍先生の遺志を引き継ぎ、職務を全うしていきたい」と述べておられました。
再考するに、安倍晋三に党内を仕切る力がないというのはマイナスではなく、小泉にとってプラスのメリットなのだ。結局、実際的に動くのは山崎だ。摂政関白時代のようなもので、おもてに出す顔には実権がないほどよいというわけだ。
[コメント]
# tea_cup 『安倍晋三幹事長の起用を批判してください。』
# レス> 『追記します。』
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