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2003.09.19

地価下落が問題ではない

 朝日新聞を除いて各紙社説は国土交通省が発表した7月1日時点の都道府県地価を扱っていた。いずれも地価の下落を問題にしているのだが、主張のトーンは違う。読売と産経は笑える。
 読売新聞社説はタイトル「基準地価 いまだ底なしの土地デフレ」でもわかるように、イケイケドンドンである。いしいひさいちの漫画に出てくるナベツネのような感じだ(参照)。結論は以下だが、実はこれは取って付けたようなもので論旨は微妙な部分もある。特に再来年から導入される減損会計の問題は重要な指摘だ。


 何より、政府・日銀が本格的なデフレ対策に取り組むことが肝心だ。景気刺激に重点を置いた予算を編成し、金融政策でも一定の物価上昇を目標にするなど、明確な政策転換を打ち出すことが、土地デフレに対する処方せんともなる。

 産経新聞社説「地価動向 明るい兆候育てる努力を」はもしかすると冗談かもしれない。引用冒頭の「それが続けば」という「それは」は東京の地価向上だ。これを好機と見て次のようにラッパを吹く。

 それが続けば、バブル崩壊で発生した資産デフレが是正されて、日本経済全体のデフレ傾向に歯止めがかかり、経済は好循環に入るだろう。
 この機を逃さず、さらに地価を底上げする努力をすべきだ。土地の証券化や規制緩和などのペースを速め、大型の都市再開発を実施しやすいような法整備を求めたい。

 日経新聞社説「地方都市の空洞化示す地価」が期待を裏切らずまともだ。問題は地方都市なのだ。地方都市が崩壊しているのだ。加えて、「2003年問題」も実際のところ「ねーじゃん」ということにも触れている。

 人口10万人以上の114地方都市の最高価格地の平均下落率は13.6%で、商業地の同10.5%をかなり上回っている。大型店の撤退などにより、中心部の下落率が周囲より大きいことを示している。

 毎日新聞社説「地価公示制度 土地神話時代の遺物なのだ」は奇っ怪だ。「そーきたか」という感じで、なんだかどっかのブログでも読んでいるようだ。ようは、地価公示制度自体が間違いだという、ちゃぶだいひっくり返しに出たのである。反則だよ、それ。

 関心があるのは、地価の動向ではなく、地価公示という制度そのものだ。高度経済成長からバブル経済に至るまで、日本には地価は永遠に上がり続けるという土地神話があった。土地は投機の対象になり、さまざまな規制が必要だった。このため、政府は全国の地価動向を把握しておく必要があり、地価公示制度が始まった。

 冒頭いきなり主語無し文という反則技を繰り出すのだが、本文中には「だからぁ、こんな制度やめようぜ」とは書いてない。ずるい。じゃ、どうすんだよに答えていない。「前提が間違っているからぁ」とかコクそこいらの小便小僧なら、「オメー、帰って寝ろ」だ。でも、毎日新聞社説のいうこと自体はそれで良いのか? 曰く、弊害は2点。(1)土地は収益還元の発想で、不動産市場で流動させるべきだ。(2)更地信仰を増長させているからイカン。だとさ。違うぜ。土地は通常の産業リソースじゃない。更地信仰云々は屁理屈だ。
 地価公示の制度がなければ、固定資産税はもとより、連動する路線価が決まらず相続税の算出が混乱する*3。土地というのは、国民の国土という意味で国民が生きるためのもっとも基本的な資産だ。
 と、毎日新聞社説をくさしてみたものの、現在進行している問題に応えているとは言い難い。というか、全然対応できない。つまり、日経新聞社説がいうように、問題は地方の崩壊であり、反面東京の一極集中だ。この地域に限って言うなら、毎日新聞社説の言うことは間違っていないどころか、正しいと言ってもいい。
 読売や産経の吹くラッパは冗談だとして、ではどうしたらいいのか? というか、何が問題なのか。地価が下がることが問題、だとしても、それはもうどうしようもないのではないか。
 ブログだからというわけでもないがあえて暴言でまとめる。東京都への一極集中は止まらない。住居としての土地はしだいに無意味になっていく。居住なら東京内のマンションのほうが住みやすいからだ。日本人はもはや地面の上のマッチ箱に子供と暮らすということはやめてしまった。もともと江戸時代の都市化をみても、そういう生活はしていない、という意味で、きちんと伝統に回帰している。そして地方都市はさびれる。しかたないのだ。資産デフレは止まらない。でも、そうなるしかない。地価で資産デフレを回復する機会など来ることはない。
 この日本の巨大な構造変化を押しとどめるのは、地震くらいしかない。でも近々予定されていた地震は来なかったね。みみずくんはご機嫌なのだ。

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