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2003.09.17

社会が自殺を強いるシステムになっていないか

 地震は来ない。今日も新聞各紙社説はつまらない。日朝問題は深刻だが、だからといって一周年記念というだけで社説を書く神経がわからん。阪神優勝も社説ネタではないだろう。というわけで、気になっていることを書く。自殺の話だ。
 昨日夜7時ごろ池袋の駅が異常に混雑をしているのでなにかと思ったら、西武池袋線が不通になっているとのこと。それだけでのこの群衆かよ。いったい地震が発生したらどんなことになるのか。まったく迷惑な人身事故だよな、と思ったが、人身事故ではなかった。主観的な印象に過ぎないが、西武線に人身事故は少ないような気がする。事はとんまなトラックが電車に接触してプチ脱線。けが人はなし。今朝のニュースを見ると、22万人に影響が出たとのことだが群衆に迷惑している私などはその影響には含まれていない。
 とっさに人身事故だと思ったのは鉄道のトラブルといえば人身事故だからだ。中央線に多い。ふと、ネットを調べたら、「2003年JR中央線人身事故情報」(参照)という情報があった。不謹慎だが面白い。新聞だけの追跡なので、実際にはもう少し多いと思うが、それでもある傾向はつかめる。自殺しやすそうな駅は、東小金井、三鷹、信濃町だ。思い当たる。東小金井と三鷹の西には電車の車庫というのかがあって、乗り換えになることが多いが、あの乗り換えがイカンのではないか。あの空白な時間はふっと自殺したくなる。信濃町はよくわからない(ことにしておこう)。反面、国立、吉祥寺、高円寺では自殺者が少ない。ある程度、所得層のある人の活気があるからなのか。駅間では武蔵小金井を挟んでが多いが、これは構造的な問題もあり、やがて高架になれば減るだろう。ついでに、「鉄道自殺/人身事故路線別ランキング2003」(参照)を見ると、「ついにJR東海道線が首位に! どうした中央線??」とあるが、東海道線に自殺者が増えているのはなぜだろう。新規の住宅が増えているからなのか。ところで、このホームページはなんなの?と思ってみると、太宰治を意識しているようだ。太宰治は自殺ということになっているが、たぶん事故だろう。ついでに、ドナルドキーンが20年くらい前だったか、日本の近代文学で残るのは夏目漱石と太宰治でしょうと言ってたが、あたり。しかも彼は太宰治の文学は西洋人にわかりやすいとも言っていた。そのわりに翻訳は出ない。ねじれたキリスト教観がかえって西洋人にわかりづらいのかもしれない。
 話がおちゃらけてきたが、自殺の問題はわかりそうでわからない。調べるほどにわからなくなる。その最たる例は自殺の各国比較とかでよく見かける統計があるが、あれはなんの意味もないのだ。特に米国の場合、自殺とは「オレは自殺するぜ」みたいな遺書が自殺認定の条件になるのだ。条件が違うのだから、各国比較などできるわけがない。

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自殺論
 自殺が社会学的な話題になるのはデュルケムのおかげで、ついその路線で考えがちだ。と書いて、ふとデュルケムを思い起こすに、宿命的、自己本位的、集団本位的、アノミー的。小室直樹を持ち出すまでもなく、現代はアノミー的と論じたくなるのだが、現在の日本の状況はアノミーではなく、むしろ集団本位的なのではないか。下品な言い方をすれば、詰め腹っていうやつだ。そして、詰め腹を強いるのはたぶん家族や愛の幻想だろう。
 無連帯だから死ぬというより、システムが「死ね、死ね、死ね」というわけだ。2ちゃんねるも実に日本のシステムだから、「氏ね」「逝ってよし」とかメカニカルに言いまくる(参照)。そこまでして、日本人はシステム的に自己抹殺を薦めているわけだ。
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ぐれる!
 冗談だか議論だかわからなくなってしまったが、現代的な相貌としては、「リタリン」など向精神薬の影響があるだろう。それが原因だからやめろという短絡な話ではないが、「鬱病は心の風邪です。お薬で治しましょう」みたいなのがいつのまにか、科学的に社会的に正しい言説になってしまった。
 実際に鬱病になると、自分でもわからず「死にたくなる」という現象になる。だが、その自分でもわからない無意識を自我から乖離させずに、意識して悩むということや苦しむことに人生の意味もあるのだ、とわりきるというのはどうだろうか。なんだか、中島義道みたいになってきたが、敵は詰め腹を強いる日本の社会システムかもしれない。とすれば、それに戦うということは苦しみを伴う思想的な営為を必要としている。

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「社会」カテゴリの記事

コメント

1998年から2008年まで、もう11年間、年間自殺者が3万人を超えているそうです。

どうしてこうなってしまったのかわからないけれど、ほんとうに、行き詰ってしまった人が多いのだと思います。

私も、じつは、今日で、失業者になって3年目です。

中央線で自殺が多いのは、昨年青梅に行った行き帰りになんとなくわかりました。中央線というのは、どんな時間帯も、どっち方向もひどく込んでいるんです。だから、疲労感が蓄積するんです。それで、ひどく心がすさんでくる。おそらく、中央線沿線に住んでいて通勤時間が長かったら、好きなときに寝て好きなときに働ける自由業者でもない限り、だれも自分のことで精一杯で、他人に対してはひどく冷淡になっていくんではないか?青梅への行き帰りにそう思いました。

私は、実は今、信じられないくらい平然としています。わたし、そんなに信心深くなんてありません。毎朝、お灯明を点火してから、ろうそくが燃え尽きるまでしか、すなわち線香1本分しかお経なんて唱えていません。
法華経だって、実質的には、方便品と如来寿量品と観世音菩薩普門品しか唱えたことありません。

でも、なぜかわからないけれど、自分のこの生涯はこの生涯なりに法華経が運命を決めてくれて、自分が働けるように働かせてくれて、自分が滅びるにふさわしい滅び方を用意してくれて、この生涯が終わったら、きっとまた次に行く先があって、適切なときに次の行き先にいけるようにしてもらえて、次の行き先でまた、遭遇すべき運命を与えてもらえるような気がしているんです。

だから、もったいなくて、とてもすぐに死ぬなんてことができないし、定職にこのまま就けなくても、まったく所得の道を失っても、やっぱり使える頭と体の機能をできる範囲で努力して使って、働きかけられる働きかけ方で自分と世の中に働きかけようとするのだろうと思うんです。

ただ、この自殺者の増加と件数の持続っていうのは、福田和也先生が日本から美しい景観がひどく失われている、特に生活に未着した場所で都市景観の美しさが損なわれているっておっしゃっていたのを思い出すのだけれど、日本から日常的な美的現実が失われているのは大きな原因であるような気がするんです。

私が変にはつらつとしていられるのがなぜかというと、これから満開になる桜とか、その後のつつじとか、その後の菖蒲とか、季節の花が咲くのをひどく楽しみにしていることと、あとは、上野公園の上野の森美術館で毎年8月に開催される、500円の観覧料で信じがたいほどたくさんの絵を見ることができる、「日本の自然を描く展」という公募展に今年もまた見にいけることが今のところ張り合いになっているからなんです。

投稿: enneagram | 2009.04.01 14:11

9年前のエントリに今頃コメントで恐縮ですが、

>特に米国の場合、自殺とは「オレは自殺するぜ」みたいな遺書が自殺認定の条件になるのだ。

intentの確認をsuicide noteが必須要件と混同されていませんか?

遺書以外でも自殺の意思が確認できれば自殺と認定しています(した)。
自殺者のうち遺書を残しているのは1/3くらいという統計データも出ています。(新しいものも古いものも。)

1985
http://library-resources.cqu.edu.au/JFS/PDF/vol_31/iss_3/JFS313861000.pdf
p.1006
"Thus, in the absence of a declaration by the actor, such as an oral statement or a suicide note, intent must be inferred from the circumstances."

1987
Operational Criteria for the Determination of Suicide
http://library-resources.cqu.edu.au/JFS/PDF/vol_33/iss_6/JFS336881445.pdf
p.1446
"Some certifiers might require a suicide note for certifying a death as suicide. Yet, only about one third of those who actually commit suicide leave suicide notes [11]."
p.1448
"Intent
There is evidence (explicit, implicit, or both) that at the time of injury the decedent intended to kill himself or herself or wished to die and that the decedent understood the probable consequences of his or her actions. "


1988
Current Trends Operational Criteria for Determining Suicide
http://www.cdc.gov/mmwr/preview/mmwrhtml/00001318.htm
"Some certifiers require a suicide note to certify a death as suicide. Yet, only about one third of persons who commit suicide leave such notes (11). "

2008
Surveillance for Violent Deaths --- National Violent Death Reporting System, 16 States, 2008
http://www.cdc.gov/mmwr/preview/mmwrhtml/ss6010a1.htm?s_cid=ss6010a1_w
"Among suicide decedents with known circumstance information, 33.0% left a suicide note, 28.7% disclosed their intent before dying, "


統計によっては古いものでも遺書なし自殺をカウントしています。
Suicide in United States Army Personnel, 1977-1978
http://www.dtic.mil/cgi-bin/GetTRDoc?AD=ADA101955
"It was observed that 27 per cent of the 228 victims left a suicide note, 31 per cent of them spoke of or hinted about suicide prior to the act, and 13 per cent had histories of suicide attempts."


1977
Suicide: Who's Counting?
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1431994/pdf/pubhealthrep00148-0029.pdf
"Litman and colleagues (11) found that in one city deaths were certified as suicide only if a handwritten suicide note was found. In Los Angeles, notes are found in only about 35 percent of the deaths certified as suicide."
によると、かつては遺書なしと自殺と認定していない市が一つあったそうですが、このときもロサンジェルスでは自殺の35%しか遺書が見つからないということだったので、全米で遺書なしを自殺と認定していなかったとは考えにくいです。
(なお、これは心理学的剖検の始まりの頃の研究のようですね。)

投稿: taremimi3 | 2012.07.31 22:42

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