スウェーデンはユーロを拒否
休日。老人の日らしい。労働日数を欧米並にして、しかも個人の選択を奪うという目的で、日本のカレンダーはボコボコに休日が多い。新聞各紙の社説は今日もつまらない。WHOの混乱などなにがニュースなのだ。というわけで、気になったニュースとして、スウェーデンが国民投票でユーロ導入を否決した話を書く。別にこの問題に斬新な知見があるわけではないが、気になるからというだけのことだ。
今回の国民投票の動向は予想がつかなかった。11日にユーロ導入賛成陣営筆頭のリンド外相が刺殺されたため、その反動の同情票が増えるという予測もあった。フランスのル・ペン登場みたいに、大衆レベルでは右派が多いくせに、一時期の現象で世論の流れが一気に変わるということがある。だが、結果は、反対56%、賛成42%。世論を分けたとは言えるが、投票率が81%とであることを考えに入れると僅差とは言えない。むしろ、同情票の上乗せがあってもこの程度だったということだ。
これをもって「なるほどスウェーデンは反ユーロなのか」という結論になるだろうか。雑駁な言い方だが、国民の動向が割れているのだろう。推進派はエリクソンなど国際企業やIT関連ではないかと思われる。EUが発展すればスウェーデン国内への投資は減るだろう。とはいえ、これもものは考えようで、エリクソンなどさっさと経営の形態上スウェーデンを離れればいい。ソニーと同じだ。ソニーはもはや日本の企業とは言えない。
そう考えると、スウェーデンの国民、というか国家の幻想性を支える大衆の意識は反ユーロなのだろう。もともと王国の伝統を持つ国なので、バイキングの歴史や前近代時代の血なまぐささはあるものの、近代化に伴い、市民が荒れ狂うフランスやドイツみたいな歴史の国とはなじまないのかもしれない。私自身の印象でもフランスっていう国は未だにボナパルト幻想を持っているのだという感じがする。
加えて、スウェーデンでは国の福祉行政がそれなりに国民から支持を受けているのだろう。国民経済がそこそこに行けば、税法式による現状の高齢者福祉に問題はない(参照)。少子化については一時期2.0を越えたものの長期には減少気味に見える。だが、先進国には珍しい回復事例は興味深い(参照)。
スウェーデンの人口は800万人ほど。東京都より少ないが、小国でもない。すでにデンマークはユーロから離反しているし、もはやイギリスもユーロ参入の目は当分はないと見ていい。これだけでもユーロの初期の幻想は終わったと結論していいだろう。ヨーロッパなどというやっかいな概念を持ち出さずにギリシアも入れたのだから(という言い方は嫌われるだろうが)、トルコも入れればいい。トルコをうまく取り入れれば対米戦略もばっちりだ、というのは、ちと放言過ぎるか。
スイスの国民投票は2008年だったかと記憶している。そのころまでに、EUの動向は変わるかもしれないが、これから小国化していく日本も含めて世界経済のなかに平和に静かに沈没していく国が増えるのは悪くないように思える。
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