国体からクレアチンを排除すべきだ
今朝の新聞各社の社説も概ね退屈だった。朝日新聞社説の「石原知事 ― テロ容認そのものだ」の執拗さは醜悪を通り過ぎて酸鼻。今回の石原都知事発言の是非は高校生でもわかる。それに、これだけ報道されているわりに話の前後がわからない。いずれにせよ話題とするような内容じゃない。
そんななか、今朝の読売新聞社説「ドーピング 静岡国体を排除の契機にしたい」 は、着想だけは悪くなかった。しかし、新聞記者っていうのはこうも無知なのか。知っていて書かないのか。問題の切り出しはこうだ。
十三日開幕する静岡国体からドーピング検査が、国体としては初めて実施される。これを、外国での話、と考えがちな日本のスポーツ界の意識を改める契機にしたい。
今まで検査していなかったのが非常識だし、今回の検査もどのレベルなのか疑われる。ただ、高校の体育の顧問レベルではそれほど医学・薬学の知識はないのでそれほど厳密な検査の必要はないかもしれない。
読売新聞社説のまとめは素朴なものだ。
一般のスポーツ愛好者への広がりも懸念されている。体格改造効果をうたったサプリメント(栄養補助食品)の宣伝がインターネットや雑誌に氾濫(はんらん)し、安易に手を出して副作用に苦しむ例もある。
「正しい食事があればサプリメントは不要」という戦後の栄養学が女の権力よる蛸壺になっているから、日本に事実上栄養学はないに等しい。現状ですら、栄養士はビタミンB6の計算すらしていない。この問題は今回はさておくとして、サプリメントは不要、インターネットは害、といった思い込みで大衆に通じると思うあたりが読売新聞らしいところだ。
前振りが長かったが、問題はクレアチンだ。国体選手を含め、多くの高校生アスリートがクレアチンを摂らされている。なのに、その実態が知られていない。
クレアチンについては簡単に説明したほうがいいだろう。クレアチンは、アミノ酸の一種で筋肉(随意筋)内にクレアチン燐酸の形態として存在し、運動の際にATP(アデノシン三燐酸)と反応してエネルギーを放出する。まさに、スポーツサプリメントの面目躍如というところだが、機序はわかっているものの、実際的な効果についてはそれほど明確になっていない。
クレアチンは米国のスポーツサプリメントでBCAAと並んで定番商品になっている。FDA(日本の厚労省の医薬局に相当)が認可しているように、食品として有毒性もない(ADI未設定)。短期の服用では問題ないことがわかっているが、長期服用の安全性については疑問の声もある。
クレアチンは概ね安全な物質だが、摂取によっては、発汗や水分代謝の機序に関わるため、脱水やそれに伴う心筋梗塞を起こす危険性がある。腎臓にも負担がかかる。製造品質の基準もないので、安価な製品には汚染の問題も潜む。日本人は日本が引き超したトリプトファン事件(参照)に無関心だが、総じてアミノ酸サプリメントには潜在的な危険性伴う。
クレアチンは、日本では1998年、法的根拠を持たない通達によって、食品区分となった。日本でもあちこちで販売されている。先進国中では、フランスが規制している。フランス食物安全局はクレアチンの長期服用に発癌の恐れがあるとして、スポーツでの使用を1999年に禁止した。
日本の国体選手の大半はクレアチンを服用しているはずだ。しかもそれは体育の教官から指導されてだ。曖昧なソースでそんなことを言うんじゃないよと批判されそうだが、現場をのぞき見た感じからこのことは確信できる。
クレアチンはアナボリックステロイドのようなドーピングには相当しない。教官達もそんな意識はもっていない。フランスの例を無視するとして、短期使用なら健康に害はなそうだ。何が問題なのか?
問題は、「クレアチンの利用はスポーツなのか?」ということだ。スポーツというものはルールに則って行うことに意味がある。健康な人間が競うというのがアマチュアスポーツ理念ではないか。それがなによりも前提となるルールであるはずだ。プロレスや野球のような興行ではない。そう考えてみれば、一般人に身体改造的なクレアチンの摂取させることは即刻やめさせるべきだ。特に高校生への適用は禁止すべきだ。
BCAA(分岐鎖アミノ酸)の利用も、同じ理屈でやめさせたほうがいい。BCAAも有害ではないが、その一時的な摂取は血中のセロトニンの代謝を変えてしまう。興奮剤とまではいかないものの、身体な自然なセロトニンサイクルを人為的に変更する作用があるのだ。
日本の子供の学力低下も問題だが、体力も問題だ。日本では、子供の身体の畸形化まで教育に組み込まれてしまっている。
資料
フランス食品衛生安全庁(AFSSA)による栄養関連意見書2件(参照)
資料日付 2005(平成17)年5月11日
[諮問番号] 第2004-SA-0173号
[諮問機関] 競争消費不正抑止総局
[案件]特にスポーツをする人に向けた過度の筋肉疲労者用食品に関する指令案評価
[概要]本指令案は、欧州委員会が基本指令89/398/CEEに基づき作成したもので、過度の筋肉消耗者用食品を4つのカテゴリー(①エネルギーを豊富に含む糖質供給食品、②糖質及び電解質の溶液、③濃縮たん白、④たん白質強化食品)に分類している。AFSSAは、これらの食品の詳細な規定、当該カテゴリー及びクレアチンについて意見を求められた。糖質の最小含有量が製品のカロリー供給量の75%とする案については、65%にするのが望ましいとする(カテゴリー①)など、いくつか見解が出された。クレアチンについては本指令案で1日3g程度の使用が定められているが、当該物質は肉などの食品から摂取されており、また摂取リスクが十分に評価されていないことなどから、当該物質の記載は正当化されないとする。
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コメント
クレアチンで検索してきたのですが、少しクレアチンを勘違いされているかなと思いました。
クレアチンは充分な水と一緒に短期間飲めば副作用はほとんどありません。
自分は感じませんでした。
クレアチンは危険、人体改造であるから禁止に、というより問題なのは知識のない顧問が正しくない飲ませ方をすることだと思います。
投稿: ハツ塩 | 2007.05.05 11:23
クレアチンはアミノ酸?違うと思いますよ?クレアチン(C4N3H4COOH)は、チッ素を含む有機物の一種で生体内ではアルギニン、グリシン、メチオニンの3種のアミノ酸から合成されますが、正確にはアミノ基をもたないのでアミノ酸ではありません。
もう少しクレアチンを御調べになられてから書いたほうがよろしいかと思いました。
が!高校生の使用は私も反対意見です。
間違った摂取をする危険性が高いからです。
ハツ塩さんも言われたように「クレアチンは充分な水と一緒に短期間飲めば副作用はほとんどありません。」これを守れるか?と言う疑問があります。
私は、中学生のバスケットボールをみる機会があります、その時にOBとして高校生や大学生も来るのですが、食事やサプリメントの事、練習の事いろいろ話をしますが、食事もまともじゃないのに、サプリメントを使う学生(大学生も含め)が多い事にびっくりしました。
「バランスの取れた食事で補え切れない栄養素をサプリメントで」
これを、教えられない顧問なら飲ませない方が良いと思います。
投稿: Leon | 2007.05.09 01:29
クレアチンは元々体内に存在する物なのでドーピングにはなりませんよ。
あなたが知識不足なだけですよw
投稿: | 2007.07.15 17:58
体内に存在すればドーピングにならないなら、
テストステロンやエリスロポエチンもドーピングになりませんね。
投稿: | 2007.10.10 19:48
クレアチンは筋力アップ以外にも、慢性疲労症候群の症状の緩和や、パーキンソン病の症状の改善、脳や皮膚の機能保護など、様々な効果があり、その恩恵によって健康が保たれてる人々も多いです。
私も高校生の摂取は反対ですがクレアチンについて論じられるのであれば、もう少し冷静な論議を求めます。
少々、偏りが激しく感じましたが論文などはお読みになりましたか?
投稿: izumi | 2007.11.04 03:30
5~6年以上クレアチン、BCAAを摂取してウェイトトレーニングに励む者です。
記述にあるような健康上の問題は一切ありません。
「やめさせるべき」の論拠は何だろう?
「疑問の声」、「危険性」だけでは
「やめさせるべき」の議論にならない。
投稿: f | 2009.07.25 14:54
言いたい事は解るけれど飛躍しすぎ。
筋肉増強剤が使用禁止になった経緯をもっと勉強する事をオススメします。
単に「サプリの摂取で能力が上がる」から=ドーピングてのは短絡的過ぎる。
投稿: PP | 2009.09.02 22:00
サプリメントは補うことが本来の目的である事を忘れてはいけません。
クレアチンは飲み始めの短期間が一番危険だと思います。
クレアチンは保水力が高く、体重は短期間で1kg程度増えます。
事実、この時期に脱水症状に陥ることが多く報告されています。
さらにクレアチンは体内に蓄積されていく物質です。
フランスでは法律で禁止されています。
投稿: ERIKO | 2009.11.12 23:08
なるほど。
他の方は誤解されてますが、
・未だ解明されて無い部分がある
・特に無自覚な高校生に「ステロイドはいかん」「クレアチンならいい」と言うのは安易だ、危険だしフェアではない、
と言うのは正論と思いますし、言い分として分かります。
↑では
クレアチンがステロイドのように危険だと言う記述ではないし、危険性があるよ、と書いてるに過ぎない。
どこまで線引きできるか分からないけど、高校生、大学生も上位レベルならスポーツジムに通ってる。
そこグレーやブラックの薬を使ってる人に出会うこともある。
スポーツ選手として、苦もなく10キロデカくなれる、1秒速くなるって言われて倫理感だけで止められるかどうか、だ。
特にステロイドのようにブラックなものでなくグレイなものに対する警戒感はないと思う。
本人に知識がない場合も含め、協会側がドーピングの線引きをしてもいいと思う。本人のためにもなると思うし。
投稿: あ | 2009.11.15 20:52
曖昧な健康的被害はともかくとして、
クレアチンは本来、少量ではありますが肉や魚などから摂取できるものです。
「身体改造的」は言い過ぎではないでしょうか。
これではホエイプロテインもドーピングということになります。
投稿: | 2010.07.05 20:52
実際に競ってスポーツをやっていない人の意見だな
ルール上、白か黒かが問題だ。
そして勝つための代償は自分で払う。
投稿: | 2010.10.26 00:02
ふざけた記事だ。競技者をなめるなよ
投稿: あ | 2011.06.27 08:59
週刊金曜日あたりでキャンペーンしてる
「牛乳は体に悪い」という議論と似ている。
投稿: | 2011.10.05 22:34
ホエイプロテイン、BCAA、クレアチンを長期使用してる、筋トレ暦30年の男性です。体重80kg弱、体脂肪率10%程度。懸垂=∞、BP=130kgX6発、下半身は重いバイクのみ。
体調不良(微熱/気管支炎)が1ヶ月ほど続き、本日血液と尿を含む精密検査をしたところ、結局まだ微熱とか気管支炎の原因の特定は出来ていないんですが…;
TP:6.1、ALB:4.0(栄養失調?なんで?)
CRNN:1.44(腎臓がヘタってる)
CK:436(筋トレマニアだし…)
WBC:9.4(微妙)、CRP:0.24(あれ?なぜ正常?)
RDW:15.2(血が濃くなってる)
という数値が。翻訳すると、
・気管支炎状態でバイク→高地トレ化→赤血球過多
・腎臓の機能低下
・2g/kg日を目標にホエイで補ってるのに栄養失調
・水分摂取を増やす必要あるかも
よく言われるように、クレアチンは水分摂取の仕方にほんとに注意する必要あるかもしれませんね。僕は水をガブガブ飲むほうなんですが、それでもこんなんですから。
投稿: T.O.P. | 2011.12.21 13:02
そもそもサプリメントはあくまで「食事」ですよ
「普通」の食事で必要量の栄養が摂取できればサプリはとる必要はありません
しかし、「普通」の食事では栄養が不足するのでサプリを摂取するのです。
あなたはサプリメントを「薬」と誤解しているようですね。はっきり言ってあなたは知識人気取りの無知な愚か者です。テリー伊藤並みの勘違い野郎です。
投稿: | 2014.01.07 00:19
我々は毎日クレアチンを普段の食事から数百mg(食生活によっては数g)摂取している
そんな中、ローディング期といわれるアスリートが最もクレアチンを人為的に摂取する期間であっても摂るのはせいぜい一日20gで、メンテ期に至っては5g程度
水分補給にさえ気をつければ、その程度の量で生命維持に影響を与えるレベルの副作用が起きることはまずあり得ない
むしろ多くのアスリートがやっているように、毎日150g以上のホエイプロテインを食事とは別に摂取する行為のほうがよほど副作用の危険性がある
10年も前の記事にツッコむのもなんだが、少しは考えてから文章を書いてはどうか
投稿: | 2014.04.11 21:39