中国人民元の維持は世界の時限爆弾
産経新聞社説「中国人民元 小幅上げでお茶を濁すな」はバランスが取れた主張で好感がもてた。結論は見出しのとおりだが内容はもう少し繊細に展開している。
購買力平価を参考にする意見もあるが、これだと対ドルで14%、対円で5%しか切り上がらないし、常に為替相場を決定付けるのは競争力だ。いきなりの変動相場制移行も、資本取引を禁じてきた中国の市場対応力からみて難しい。「世界の工場」が大混乱すれば日米欧経済にも波及する。
だが、ただ切り上げ幅を増せというのではない。
ここは小幅切り上げでお茶を濁さず、せめて切り下げ分を戻した上で変動幅を設けるのが現実的だろう。中国にとってもそれが厳しい変動制移行圧力を避ける最善の道ではないか。
とはいえ、こうした提言を中国が認めるわけはなく、まるで効果がない。しかも、だからといって中国を責めても改善するような国ではない。結局のところ、中国に外貨が貯まり過ぎて世界経済が音を上げるまでこの状態が続くだろう。現状の人民日報(参照)の論説はその時に笑い話として歴史の片隅に残るだろう。
やっかいなのは、最初に音を上げるのはたぶん日本であり、しかも日本の音の上げかたは、まるで鬱病患者の自殺ようにひっそりとするだろうから、結局米国が切れるというストーリーになるだろう。印象でいうのだが、結局日本に貯めてある莫大な金を世界システム的に漏出することで最悪の事態は回避されるのではないか。偽虐史観どころじゃない話だが。
この問題のシグナルを読む上で邱永漢(参照)が面白いことを言っている。切り上げの前に株高が起きるというのだ。経験的な視点だが、このまま世界状況が推移すれば、おそらくそうなるだろう。中国関係で小金持ちが騒ぎ出せば、災厄は近いとみるべきか。
ただし、これも印象でいうのだが、SARS騒ぎのような事態を見ていると、中国を取り巻く世界の状況はそう淡々と推移していくとも思えない。案外、中共はそうした予感を織り込んで人民元を攻防しているのではないか。
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コメント
このエントリを読んで、思わず感慨にふけってしまいました。
そうだよね、って呟いたりもして(笑)。
投稿: jaz | 2005.06.14 00:51