6か国協議のポイントは中国の動向だ
北朝鮮の核開発問題をめぐる6か国協議が終わった。各紙社説がこぞってこれをとりあげるのはしかたがないが、予想外の展開はなかったため、各紙とも毎度ながらの路線で書き飛ばしただけだった。
もううんざりという気分もあるが、北朝鮮関連の朝日新聞の社説には開いた口がふさがらない。冗談として笑い飛ばすにはあまりにひどすぎる。朝日新聞社説の話の展開はこうだ。
- 日本は北朝鮮への経済援助国でもあり米国ともつながりが深い。
- だから、米朝関係の改善を助けることができる。
- 米朝関係が改善すれば核問題は解決する。
- 改善の障害になっているのは拉致問題だ。
- 拉致問題の解決には限界がある。
- 拉致問題に手間取っていると核問題が深刻になる。
ようするに、この展開では拉致問題は後回しにしろということになる。しかし、この後にこう続く。
これを打破し、日本が主張するような核と拉致の包括的な解決に向けて日本自身が役割を果たすには、結局、拉致問題打開の糸口を一日も早くつかむことしかあるまい。まず被害者の家族の帰国を実現させ、それを手がかりに日朝の対話を開くことに、政府は全力をあげてもらいたい。核問題と拉致問題が絡み合った知恵の輪を解くには、確固とした外交戦略とそれに対する国民の理解を得る努力が要る。
この結論だけみればまっとうなのだが、全体は支離滅裂。ようするに朝日新聞社社内で意見が割れたためにこんなキメラができたのだろう。好意的に見るなら、「被害者の家族の帰国を実現」でお茶をにごそうとする田中均の路線の補強だが、冗談ではない。表面的な「被害者の家族の」の裏には膨大な拉致問題が隠れているのだ。朝日新聞のこの問題についての論説は愚劣極まる。
各紙社説のなかで今回は日経だけが、中国の動向に僅かにふれていた。
中国は議長国として冷静に振る舞ったが、北朝鮮の言動へのいら立ちが漏れ伝わってきた。日米の強固な姿勢にもかかわらず北朝鮮が協議をボイコットしなかったのも、一段の孤立を恐れたからとみられる。
この点が重要だ。おそらく、当初の北朝鮮の夜郎自大な態度を抑えさせたのは中国だ。背景は2つ考えられる。中国の対日政策の一環、それと、北朝鮮と中国の問題だ。
なぜか日本のジャーナリズムでは言及されていないが、北朝鮮国境地帯の中国での治安の悪化はかなりのもののようだ。国境を接しているがゆえにうける中国の被害がある限界を超える可能性もある。このあたりの情勢が、実は、全体の構図を変える要因になりうる。
たわいない余談を付け加えたい。歴史に悪名高い随の煬帝だが、その帝国の統治が悪かったわけではない。その滅亡原因は高句麗攻めの失敗だった。古代史においては、高句麗の背景に突厥が潜んでいるのだが、いずれにせよ、北朝鮮の地は中国の統治を揺るがす呪いが感じられる。
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# 鴨緑亭 『今回は中国・ロシアはメンツ潰されたんじゃないですかね。』
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