平和教育の残酷さ
読売新聞の社説「平和教育、理念と方法の見直しが必要だ」で現状の平和教育の問題点の一例として、「沖縄では、残虐な写真によって子供が人間不信に陥る恐れもある、とする平和教育の手引を県教委がまとめた。」とあり、共感した。
沖縄と限らないが、平和教育として展示される写真の大半が猟奇的な印象を与える。はっきりいって、ある程度社会が理解できる高校生以上ならこうした展示も意味があるが、中学生以下の子供に見せるようなものではない。主催側としては真実を直視せよということなのだろうが、実際には心理的な恐怖を根付かせようとしているだけだ。恐怖によって人の心を支配しようとする目論見は独裁者のそれと同じだ。米国同時多発テロでも良識ある米国民はビル崩壊の映像をテレビで垂れ流すことに違和感を覚えていた。
もう一点、時代というものなのか、「写真=事実」という前提があるように思われる。しかし、写真は事実ではない。編集可能な偽物だ。現代のように高度な画像処理ができる時代でなくても、コラージュで思い通りの写真ができた。仏新聞ルモンドもさすがに写真を掲載しているが、それでも写真というのが事実を捕らえる思考に害をもたらす危険性は知識人には理解されている。
ヴァーチャルリアリティが現実感を奪うといった単純な議論が多いが、およそ擬似的に見えるものは事実ではない。なにより、平和というのは生活者の実感からうまれなくてはならないのだから、残虐な展示などは控えるべきだろう。
[コメント]
# shibu 『論旨明解!主張明確。仰る通り。戦場売春婦はカットされました。どこから見ても馬賊つらの「朝鮮義兵」もいなくなるでしょう。「恐怖によって人の心を支配しようとする目論見は独裁者のそれと同じだ。」ですぐ毎日見てるCCTVでの死体映像に被疑者取調べ自白シーンを思い浮かべました。一罰百戒もあるでしょうが、あれはまさにお説どんぴしゃの「現在の」実例でありましょう。』
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コメント
原爆投下日が登校日だった地域で生まれ育ちました。
その日が近づくと小学校の渡り廊下に被爆状況や被爆者(死者含む)の写真が20枚くらい張り出されます。
やっぱりトラウマになりましたね。
個人的に言えばそのトラウマから得るものも大きかったので、それを止めるべきかどうかということについてはちょっと保留にしておきたいのが正直なところ。
が、これ「幸田さん殺害シーンを語ることの意味について」にも通じるものがあるんですよね。それを考えると「止めるべき」と言いたい気が...。
投稿: 西方の人 | 2004.11.13 00:49
ただこの議論が続いて、原爆や沖縄戦が嘘だった、などということに発展するのは困りますね。
原爆、沖縄戦が事実であり、戦争とは残酷なものであること、消して美しいものではないということを後世に伝えることを最重視するということは既にコンセンサスが取れているので。後は微細な議論です。
言論にはお気をつけて。
投稿: 木 | 2004.11.13 19:20
原爆や沖縄戦が嘘だったと言う話は、2chに年に2〜3回くらいの割合でスレッドが立ったりコメントが続いたりしますね。
私はネタだと思っていますが・・。
投稿: エフ | 2004.11.14 00:40
私は現実にトラウマになりました。
小学校低学年時、ついうっかり原爆資料館に入ってしまい、
小学校時代は悪夢と不眠に悩まされ(ついでにいじめにも遭っちゃいましたが)、
中学校ぐらいまでは、平和教育と称する映画や映像を見せられるのを極力避け続けました。
高校ぐらいにやっと不眠症がなくなり、自分でもそろそろ大丈夫かと思ってた時期、社会科で原爆の威力をシミュレーションするという映像を見せられ、油断していたため気絶してひっくり返って保健室に担ぎ込まれました。
すでに古傷ですが、今でもこの時期は気分が重いです。テレビなんて付けないし。
今考えても、小学校時代の精神状態は良い経験とは言い難いです。
原爆、戦争の映像や写真は貴重な資料でしょうが、小学生にとってはただのグロ画像でした。
投稿: 亜巳 | 2005.08.05 10:28
そうそう。剥堂です。
同時にボクは、「尊い犠牲」という言葉も、古代の「生贄」を想起させるので大嫌いです。
それじゃ、いつまでたっても犠牲者が必要じゃんかと。
投稿: LISApapa | 2005.08.06 12:20
平和教育を毎年うけました。
たしかに、悲惨で気分が悪くなったときもありました。
でも、だから大人になった今は、核抑止論を唱える人たちはどうしてそんな人類を危機に導くことをわざわざいうんだろうと思います。あんな悲惨なことが自分の身にふりかかっても平気だというんだろうか?それとも、そういう人たちはただ核がおちたら、戦争が起こったらどうなるかを知らないだけなのでしょうか。あんな悲惨な、の”あんな”を知らないの?知っていたら、どうしてあんなむごいことをどんな理由であれ推奨できるの?
わかる方がいたら、ぜひ教えてください。
だから、私は、平和教育をうけてよかったと思っています。少なくとも、非戦闘員を大量虐殺をした原爆投下を60年たった現在でも正当化できる人間に、自分がなっていないことに、よかったなあと心から思います。
投稿: ほ | 2005.08.19 17:48
残虐写真の否定で平和教育の否定と繋げているが、現在の平和教育のありかたが間違えていると思うのなら、もっと別の平和教育のあり方を提案すれば良いのではないかなー?
平和が嫌いなら別だけど~。
平和世界の実現への道(考え方)が左派と右派の違いなので、左派は日本嫌いでも日本を滅ぼす為に活動しているのではないことは、本当は判っているのでしょう~。
力で対抗しようとする右派に対して、対話で解決しようとする左派の平和活動を現実的には(悪い)相手を増長させるだけで、かえって平和の為には危険である。と右派は考えている。どちらも戦争好きではないのだが、
現在日本はそのような右派的な考え方が主流となりつつあるので、気をつけないとね~~。
【正しさ】は自分の頭で考えると、すぐ判る問題だけど、ことは単純ではないのは、現実が何が現実であるか?という問題。
個人が見える現実は個人によって違うことが難しいよね~~。
ワタシャ理想的平和主義者です。
投稿: 通行人 | 2005.11.09 00:27
残された戦争の歴史をとどめた遺構を通して、平和の大切さ、戦争の悲惨さを語り伝えなければと考えて、ささやかな活動をしています。原爆ドームを,残す必要がないと考える生徒,学生が増えていく現実をどのように受け止めるのか、頭の痛い問題です。意識、無意識的に、各地に残された貴重な戦争遺構が取り壊されている現実を何とかしなければと行動しています。
投稿: 戦争遺構研究会 | 2006.03.03 14:42
日本だけに限らず、戦争記念館というものは、ほとんどが被害者の立場で造られていると言っても過言ではないでしょう。 東アジアでの反日感情や、中東での反米感情というものは、基本的に植えつけられたものです。現代の青少年が経験したものというよりも、彼らの親、そして先祖が通ってきた道から、何かを学ぶために建てられているものですが、より過去に目が向かれ、感情だけが未来に連結されるでしょう。
平和教育とは、決して戦争の是非を語るだけではないと思います。過去に敵対していた国に住む現代の同世代の若者達と共に国境、文化、そして言語の壁を越え、未来を築いていけるように教育することが本当の平和教育だと思います。
投稿: 平和教育研究者 | 2006.07.15 16:48
批判、文句、愚痴などでなく各自が考えていることを[内閣府]、[国際連合」等の投稿欄へ意見を入れてください。先日、国際連合を通じて北朝鮮の核実験についての抗議声明を送りました。小さな動きを世界中に広げていければと考えています。
投稿: 戦争遺構研究会 | 2006.10.15 00:30
終戦時の内閣を率いた鈴木貫太郎の堺市内の生まれた邸宅跡(地元の古老たちの証言)、陣屋跡の保存を考えています。歴史の再確認のためにもご協力ください。
投稿: 戦争遺構研究会 | 2006.11.14 13:02
大阪、中ノ島公園の整備計画で解体されようとしている明治の戦艦[最上]の記念碑の保全再生を,5月3日、PM3時中ノ島公園(天神橋の下)の「戦艦最上」跡で保存を訴えるビラの配布と説明をします。かけがえのない歴史遺産は開発的保全再生を図るべきです。関心のある人は大阪市長に保存のメールをお送りいただければ幸いです。
投稿: 戦争遺構研究会 | 2007.05.03 09:04
戦後62年目の戦争遺構ウオッチング。大阪、中之島周辺の戦争に関する建築、戦争遺構などを探索します。大阪、中ノ島公園の整備計画で解体されようとしている明治の戦艦[最上]、進駐軍に接収されたビル、空襲の被害の跡を残す建物8月3日、PM1.30時、大阪市役所正面(御堂筋側)集合。定員30名。関心のある人はおいでください。お待ちしています。TEL072-236-3357。
投稿: 戦争遺構研究会 | 2007.07.07 20:28
昨年に続いて、戦後62年目の市民による「ミニ戦争展」の開催。8月7日~11日(AM10時~PM6時)、南海高野線北野田駅前、堺市立東文化会館、展示していただけるものがあればご連絡ください。最終日、11日AM10時、終戦を忘れないために映画「8月15日の動乱」(鶴田浩二主演)を上映します。関心のある人はご自由においでください。お待ちしています。
投稿: 昭和の庶民史を語る会 | 2007.08.01 09:35
大阪、中ノ島公園の整備計画で解体されようとしている明治期の軍艦最上の現地での保全再生を要望しています。かけがえのない戦争遺構は、歴史価値を生かして活用させてください。戦争遺構の活用をメールで呼びかけています。保存を要望していただける方は、大阪市へ保存要請のメールをお送りください。今でも保存を求める声は続いています。最後の最後まで保存をお願いしていきます。ご協力よろしくお願いします。
投稿: 戦争遺構研究会 | 2007.08.13 16:02
貴重な戦争遺構、大阪市東淀川の高射砲陣地の遺構の保全再生を要望しています。戦争遺構の保存よりもっとやることがあるだろうと考える人は多いのですが、かけがえのない歴史遺産は開発的保全再生を図るべきです。時代の流れと諦めず歴史遺産の保存にご協力ください。かけがえのない戦争遺構は、歴史価値を生かして活用させてください。歴史遺産の活用をメールで呼びかけています。保存に賛同いただける方は、大阪市へ保存要請のメールをお送りください。平和について考えるために行動を続けています。かけがえのない歴史遺産の活用を実現できるまで働きかけていきます。歴史遺産の保存は市民、国民、自治体の勤めであると思います。ご協力よろしくお願いします。
投稿: 戦争遺構研究会 | 2007.08.15 15:08
戦後62年目の戦争遺構のウオッチングの開催。貴重な戦争遺構、大阪市東淀川の高射砲陣地の遺構の保全再生を要望しています。柴島周辺の戦争遺構、機銃掃射の跡などを探索します。大阪市道の建設のために取り壊される予定の貴重な高射砲陣地跡、軍人墓碑などを見て回ります。平和について考えるために行動を続けています。9月23日(日)、阪急千里線柴島駅改札口、PM1・30時集合、定員30名。関心のある人は、おいでください。お待ちしています。
投稿: 戦争遺構研究会 | 2007.08.21 10:23
幻燈で見る都市の建築遺産と負の遺産~見直そう昭和の戦争遺構」、防空壕、掩体壕、高射砲陣地跡、師団司令部庁舎,照空隊陣地跡、兵舎などをスライドで見ます。5月17日、AM11時、南海高野線北野田駅前堺市立東図書館(アミナス北野田4階)で開催.定員15名。近くで、関心のある人はおいでください。
投稿: 戦争遺構研究会 | 2008.05.03 09:23
第41回、昭和史の記録映像上映会のお知らせ.5月10日、AM11時、堺市立東文化会館で「そして日本は焦土となった~都市爆撃の真実」の悲惨な記録映像を見ながら昭和史を学び、考え、語り合います。平和、戦争について考えるために行動を続けています。毎月第二土曜日開催。近くで、関心のある人はご自由においでください。また、昨年に続いて市民参加によるミニ戦争展の開催(8月4日~9日)をします.展示していただける物(資料、写真その他)があれば連絡ください。最終日、9日、AM11時から、同じ場所で、昭和の庶民史を語る会の定例会で『映画、きけ、わだつみの声』の映画を上映します。
投稿: 昭和の庶民史を語る会 | 2008.05.03 09:38
昭和史の記録映像上映会のお知らせ〈毎月第二土曜日開催),3月14日、AM11時、堺市立東文化会館で「銃後の女たち~ぜいたくは敵だ(昭和13年~15年)」の記録映像を見ながら昭和史を学び、考えます。参加無料、戦前のことを御存知の人もこられますが、当時の体験などお聞かせくだされば幸いです。関心のある人はご自由においでください。お待ちしています。
投稿: 昭和の庶民史を語る会 | 2009.02.20 15:07
戦争遺構の保存を考える。ポーランド政府のアウシュビッツ強制収容所跡の保存募金の呼びかけに協力を
突然失礼します。ご面倒をおかけしますが、ご支援、ご協力をよろしくお願いします。ポーランド政府のアウシュビッツ強制収容所跡の保存のための募金の呼びかけに日本からも協力していきます。平和について考えるためにささやかな募金活動を続けています。市民のまごころに訴えてワンコイン〈100円)募金をお願いしていきます。大変な世の中で歴史遺産の保存のための募金活動どころでないといわれます。しかし、世界市民として文化財の再生に、貧者の一燈で、参加していきます。新聞、雑誌、講演会、見学会などを通して市民に呼びかけています。集められた募金は東京都目黒区三田2-13-5、駐日ポーランド共和国大使館か、堺市東区大美野155-13、戦争遺構研究会(072-236-3357)までお送りくだされば幸いです。現在、市民から尊い寄付が寄せられています。今後ともご支援ご協力よろしくお願いします.上映後、ポーランド政府のアウシュビッツ強制収容所跡の保存募金の呼びかけに日本からも協力していく、ワンコイン〈100円)募金をお願いしていきます。
投稿: 戦争遺構研究会 | 2009.03.17 10:51
平和教育とはそもそも何か、finalvent さんの意見を頂ければ幸いです。
投稿: tube | 2011.04.28 22:06