2019.09.16

サウジ石油施設攻撃について

 14日、サウジアラビア東部にあるサウジアラビア国営石油会社サウジアラムコの石油施設の2カ所がされた。この事態は日本でもすぐに報道されたが、その後の経過や意味、解説について、週末と連休を挟んでいるせいか、国内の報道は薄い。NHKでも断片的であり、何より報道ソースをCNNやロイターに頼っている。他、大手新聞社の報道も薄い。共同もロイターを孫引きでしか伝えていない。この状態はすでに日本の報道の危機とも言えるだろう。現状、日本国内での実質的な報道は、海外報道社の日本語版によるものか、あるいはヤフーブログで識者とされるブロガーのコメントが目立つくらいだ。が、ブログという建前からは通常のブログ同様、恣意的なものにならざるを得ない。私の記事もそうした恣意的なものではあるが、今後さらに懸念される事態にもなりうるので言及しておきたい。
 一番の懸念は、端的に、戦争である。米国とサウジアラビアが組んでイランと戦争を起こす懸念である(イラクも微妙に関連している)。トランプ米大統領のツイッターを追っている人なら知っていると思うが、"we know the culprit, are locked and loaded depending on verification(私たちは、検証に基づいて、犯人を知っているし、銃には弾が充填されている)"として、犯人としてイラクをほのめかし、"locked and loaded"として武力行使をほのめかしている。もっとも現状はまだほのめかしによる牽制であるが、イラン側でも戦争の用意はできているという声明も出ている。
 二番目の懸念は、原油市場の動向である。高騰も懸念されはする。ただし、今回の攻撃の規模は小さく、完全な回復までには数週間を要するとしても、世界の石油市場に大きな影響は与えない。それでも石油施設の脆弱性が顕になったことから、リスクのプレミアムで原油価格が上昇してくる。ただし、その結果は必ずしも世界経済への悪影響ばかりとも言い切れない面もあるだろう。
 現状では、戦争が迫っているというほどでもなく、原油市場が大きく荒れるという予想も弱いので、日本の報道社のように、それなりに安閑としていてもいいのかもしれない。
 さて、これはどのような事件だったのか。詳細はどうなっているか?
 残念ながら、攻撃実態については、国際的にも明らかにされていない。米国とサウジアラビアが情報を十分に開示していないせいだ。ゆえに、その理由はなぜなのかが問われてくる。なお、これに若干イラクも関連している。
 まず、前提として疑問を呈しておくべきことは、今回の攻撃の背景にイランがいるかについだ。意外にも、ポンペオ米国務長官ですら、イエメンからの攻撃だという証拠はない言明している。が、イランの仕業だともしている。余談だが、これもツイッターでの発言がもとになっている。ツイッターが報道を出し抜く構造は定着している。いずれにせよ、米国としては、今回の事件の背後にイランがいると断定しないことに含みを持たせている。また、このため、日本の報道社ではNHKも含めて親イラン的な論者を抱えていることから、この部分での解説が弱い(米国非難の基調が日本人受けするせいもある)。だが、特にNHKは、今後の事態の推移の可能性を踏まえ、イラン側に親和的な傾向の自覚をもち、それ以外の論者とのバランスをとっていったほうがよいように思われる。
 次の疑問は、なぜサウジアラムコの石油施設がそんなに脆弱だったのか?である。攻撃は予想されていなかったのか? そもそもサウジアラビアの防空警戒態勢は発動しなかったのだろうか? これには関連する疑問が続く。攻撃はドローンと言われているが、実際の兵器はなんだったのか。すでに、攻撃に失敗した兵器はサウジアラビアに回収されているので、研究はされている。ここで余談だが、サウジアラビアは近年、対イラン政策でイスラエルと実質に同盟にも近い連携をしていていて、こうした技術解明には米国に加えイスラエルも噛んでいる。さらに余談になるが、サウジアラビアは国内の弾圧のための情報システムをイスラエルにアウトソーシングしているようでもある。それ自体が深刻な問題でもある。
 3番目の疑問は、攻撃のタイミングの意味合いは何か?だ。フーシ派が攻撃の新能力を急いで誇示したかったという考えは稚拙すぎるだろう。普通に考えれば、イランから米国へのメッセージだと見てよく、タイミング的にはボルトン補佐官の解任に関連しそうだ。が、そこからどういうメッセージを読んでよいかは、いまひとつ、よくわからない。加えて、もう一つのメッセージの対象は、EUと日本だろう。EUと日本が、戦争を回避するために米国から距離を取ればイランにメリットとなる。特に戦争を嫌う日本の国民性はイランが上手に活用できる。
 陰謀論めくがもう一つ気になっていることがある。この脆弱性はサウジアラビアと米国の罠なのではないだろうか? 米国が本格的に戦争に突入するためには、真珠湾攻撃のような事態を演出する必要がある。ただし、それならまさに青天の霹靂ではいと効果は薄いだろう。とはいえ、今回の事態で、この間、実現が取り沙汰されている米国とイランの直接首脳会談をトランプ大統領側から体よく否定することはできた。

 

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2019.09.14

千葉県の広域停電と過疎地域

 台風15号の影響による千葉県での広域停電の状況を報道社による地図で見ていくと、概ね、台風の軌跡をなぞっていることがわかるが、過疎地域を浮かび上がらせたような印象もあったので、過疎について考えるきっかけにもなった。
 千葉県での停電復旧が遅れている理由は、想定外の被害であっ たということだろう。地形が複雑なことや樹木倒壊による交通の遮断なども復旧の妨げになっている。過疎そのものが影響したとは言えないだろう。だが、過疎地域の災害対策はどのようにあるべきかは今後も問われるだろう。過疎であれ、人が居住する地域であれば、水道と電気のサービスは欠かせない。が、その災害時のレジリエンスをサービスに含めたとき、公費とのバランスは問われてしまうし、なにより、地方自治体に十分な資金はないだろう。この問題に簡易な解答はないように思われる。
 関連して関東地域での過疎の状態を見ておこう。平成28年の総務省『過疎関係市町村都道府県別分布図』より。

Screenshot-20190914-at-111323

 過疎の定義(過疎地域自立促進特別措置法)といった詳しい説明は抜きにしても、南房総が過疎地域であることは見て取れる。そして、この地域に人が多数住んでいない場合、どのように都市部との交通や生活物資、災害時対応のロジスティクスは問われる。というか、今回の災害で問われることになった。おそらく地方自治体では税収などの面で対応はすでに限界にあるのではないか。
 県側の平成30年の人口密度の発表では次のようになっている。
Ch30
 白塗りの部分が過疎に近い。が、過疎とまでは言えないが網点の地域でも1km平方に1000人未満で、どちらかというと閑散とした地域という印象はある。これが平成15年だとこう。
Ch15
 15年も昔の状態だが、この間、人口縮小の日本でこの地域だけ大きな人口増加があったとも思えないので、実態は現状とあまり変わらないのではないだろうか。その上でこの地図を見てわかるのは、まず、市町村統合前であること。千葉県側というより国の施策ではあるが、この間にだいぶ、市町村統合を行った。これは地域の公共サービスを強化する意味合いもあっただろう。
 次にわかるのは、実質色塗り以外は、1km平方に1000人未満であること。やや語弊のある言い方になるが、濃い色が付いて色分けされている部分が首都圏に含まれる千葉県であり、薄く表示されているところが閑散とした千葉県である。印象では、同じ県でありながら、異なる地域が合体しているようにも見える。ただ、この件については、東京都も同じで、先の関東の過疎地図でもわかるが奥多摩は過疎地域である。だいたい、拝島より西は同じ東京都とは思えないほど閑散としている印象がある。余談だが、田無市が改名して西東京市となったが、あのあたりが、東京というときの西の地域なのだろう。
 千葉県に比べると、埼玉県のほうが閑散としていてもその落差は少ないように見えるし、その状況は茨城県から栃木県に連続しているようにも思う。また、西伊豆が房総のように例外的な過疎地域ではあるが、太平洋側は概ねなだらかに連続している。
 というところで日本全体を見ると、次のようになっている。

Screenshot-20190914-at-111408

 この日本の過疎の状況を見て、そんなことは知っていたさという人が多いだろうが、それでも改めて見直すといろいろ考えさせられる。北方領土のように政治の話題にすると熱心な議論がわきたつが、それがなければ北海道はほぼ全域が過疎地域になりつつある。この国土をどう維持していったらいいのだろうか。四国と山陰、九州と紀州も似たような状況にある。言葉狩りで消えてしまった「裏日本」もこの地図からは見て取れる。
 千葉県での市町村統合を見たが、同様に今後は日本全体で、県の再統合が必要になるだろう。大阪「都」が話題になるが、日本の課題としては、県以下の行政区のようなものも必要になるだろう。国会議員の割当は人口比へと向かっているが、それ以前の地方自治体の統合が重要なのではないか。
 そしてなにより、今回の千葉県の広域停電でも想起されたがこうした地域での自然災害とその復旧はどうあるべきなのか、単に公共投資の問題に還元するのではなく、なんらか、日本のグランドデザインが必要になるようにも思う。すでにあるのかもしれないが、私は知らない。そして、なんとなく思うのだが、この状況はおそらく放置され、災害ごとにメディアの映像で賑わい、一過的に忘れられていくのではないだろうか。

 

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