2015.04.11

[書評] トンデモ地方議員の問題(相川俊英)

 ポリタスの特集企画『「統一地方選2015」私たちの選択』が始まった(参照)、と昨日思った。そして、私の主張も近く公開されると思う、と昨日この原稿を書き始めたものの、なんか虚脱して放置していて今朝を迎えたら、すでポリタスに上がっていた(参照)。なので、今回の統一地方選挙について、私の主張をここで繰り返すこともないかとも思った。

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トンデモ地方議員
の問題 (携書134)
 今回のポリタス特集の最初の記事は特集開始にふさわしく「「選んではいけないNG候補」の見分け方 5箇条」(参照)とあり、読み始めてから、あれ?と気がついた。『トンデモ地方議員の問題』(参照)を書かれた相川俊英氏の主張であった。
 当然、同書に含まれる内容と同じ項目だが、ポリタス掲載のほうがやや詳しい。同書では「選ぶべき地方議員の四つのポイント」もあるが、基調はポリタス掲載に織り込まれているように受け取った。
 その同書であるが、まず書籍として面白い。紹介にある「号泣会見、セクハラ、謎の政務活動費…地方議員のあきれた実体が次々と明らかになってきた」という部分はコメディのように面白い。だが、これを面白がっていいのだろうかというあたりで、なんとも、もにょ~んとした残尿感のようなものに襲われる。
 地方議会の喜劇悲劇は、誰にとっても他人事ではない。日本の市民それぞれの足下の地方議会の実態の大半はこれなのだ。面白いといって笑うにしても自虐の演技もクソもない現状である。
 そういうわけで、まず笑える部分の話を「第一章 いまどき&ありがちな地方議員」に振った後、同書も、地方議会の仕組みと事例研究に入っていく。こう言い方もなんだが、新社会人になる人は、偉そうなブロガーの社会人説教なんかをリツリートするより、まず、この「第二章 地方議員のホントの仕事と裏の仕事」の実態を知っておくといい。地域に生きて、普通におっさん・おばさん化してくると、こういう議員「先生」の実態に遭遇することになるものだ。あと、この二章では特に、「議長職争い」のところでブラックジョークのような世界があるのも知っておくといいだろう。
 「第三章 学芸会&八百長「議会」」はジャーナリスティックな章題だが、ようするに、大半の地方議会は、学芸会であり八百長であるということ。まずもって議会の体をなしていない。議会として行政の監視機能すらない。続く「第四章 トンデモ議会とよりよい議会」は特に章分けもなくつながっていると読んでもいいだろう。
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議会からの政策形成
議会基本条例で実現する
市民参加型政策サイクル
 笑って読みながらどんどん気分が沈んでいくのだが、そうしたなかで、唯一具体的な希望があるとすれば、会津若松市議会の事例だろう。同議会作成の『議会からの政策形成』(参照)は非常に興味深い。無料配布のPDF版(参照・PDF)もある。これがもう少しわかりやすく提示されるとよいと思うし、存外にポリタスなどがそういう志向であってもよいのではないか。
 「第六章 選ぶべき議員と選んではいけない議員」は、一部がポリタスに重なっているがこの間の問題意識としては示唆深い。ただ、改めて読み返してみると、この部分は地方議会が抱える問題という点でそれほどの比重はないかもしれないという印象もある。というのは、どうすればいい?という問いに、民主主義なのでよい議員を選びましょう、というのはその通りだが、実際にはあまり意味をなさない現状がある。
 そういう問題提起と解決の枠組みをどう受け止めるかだが、本書では、「第五章 地方議員のお財布事情」と「第七章 私案「議会&議員定数&議員報酬」が重視されている。私の視点から言い換えれば、どういう機構にすれば地方自治体が合理的に「経営」できるかということになるだろう。このあたりについては、各種模索されていて、一件良案に思えるのが実際にはうまく言っていない事例などが興味深い。とはいえ、同書で示される私案もうまくいかないのではないかという、印象的だが、懸念も浮かぶ。
 じゃあ、どうすればいいのか? という問題は残るのだが、ようするにこれを「経営」という視点で見ると、私はやはり一種の危機管理のなかで捉えるべきではないかと思う。ようするに私がポリタスに寄稿した話題に戻ってしまうが、消滅可能性自治体を上手に危機管理していく仕組みが必要になる。そして、この問題は該当の自治体が注目されがちなのだが、すでに触れたが、重要なのは、消滅可能性自治体を受け入れる側の地方都市のありかたになる。
 あえてもう一歩踏み出していうなら、まだ余裕のある地方都市が自分たちの経済圏を拡大してうまくやっていこうとすると、さらに消滅可能性自治体との格差が広がってしまう。それも一種の自然過程ではあるのだろうが、想定される悲惨な事態はできるだけ減らしたいものだ。
 あと話がちゃぶ台返しのそもそも論に近くなるが、「地方」という言葉の含みが、地方創生でもそうだが、東京を他方の極に対比させがちだなのに、とうの東京は超高齢化というとんでもない問題を抱えている。東京もまた地方としての大きな課題がある。ただ、今回の統一地方選挙に東京がないせいもあって、あまり浮かんではこない。
 ざっと言えば、国と地方(中都市圏と消滅可能性自治体)と東京という三極の構造のなかでどう利害を調整していくかという課題にはなるだろう。
 

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2015.04.09

アベノミクスでミートソース缶が減量したのか?

 先日、面白いツイートがあった。該当ツイートにある写真を見ればわかるように、キューピーのソース缶が最近、減量したかに見える。

 このツイートを見たおり、そういえば、このミートソース缶は私の好みなので買い置きがあったかもしれないと食材棚を見たら一つ残っていたので、この旧缶の内容とキューピーのサイトにある新缶の内容と比較してみた。結果、総量は減っているが内容がそれで減量されたとは言えないと思い、そうツイートした。単純な話、食品の内容量の大半は水分なので水分を減らせば、全体量は減るからである。
 だがこの際、ちょっと勘違いしていた。結論からいうと、全体で減量されていると言ってよい。
 すると、減量による実質的な値上げはアベノミクスのせいか……という話はひとまず置くとしても、製品の事実上の値上げにあたるのではないかという議論にもなりそうだ。
 だが、旧缶と新缶では内容構成が変わっているので、単純に総量減による「隠された値上げ」とも言いがたい。
 じゃあ、どうなんだ、というので、もう少し踏み込んで調べてみた。その結論を先にいうと、まあ、値上げとも言い切れない、だろう、ということにはなった。
 記載ミスがあるかもしれないが、こうした話は数値で見たほうがてっとり早いので、表にしてみた。

 上2行は100g当たりで見た内容量である。これは単純な話、缶を開けてみてちょっと嘗めてみたときの味の印象を意味すると言ってもいい。
 そこで簡単に見て取れるのは、低カロリー化である。そのために、脂質と炭水化物をできるだけ減らし、変わりに味の濃さを出すためにタンパク質を少し上げ、塩分(ナトリウム)を上げている。これは総量を減らした分の補いと見てよい部分はあるだろう。
 下3行は缶あたりの総量で見たものだ。話題の発端となったツイートでは暗黙の内に旧缶と新缶の内容構成は同一と仮定されているが、具体的に見ると、全体量の減量86.44%化は他の内容量に比例はしていない。
 ここでも、当然低カロリー化であり、脂質と炭水化物の比率が全体の低下率より低い。他方、原価に一番影響しそうなタンパク質の比率は全体比率より高い。興味深いのは塩分の増加である。
 総じて減量化されているのだが、話題の発端となったツイートでは同一価格とされているが、参考小売価格で見ると、89.13%安価になっている。
 とはいえ、参考小売価格の低減率は総量の低減率より多少高いので、若干の値上げと言っていいし、消費物価の向上に現時点でほとんど影響のない、という、まさに現状に対応しているので、アイロニカルに「なるほどアベノミクスでミートソース缶が減量した」と言ってもよいだろうが、このアイロニーはあまり多くの人には理解されないだろう。
 まとめると、この旧缶から新缶への変更で、事実上の値上げがあって庶民の生活を圧迫された、とは言えないだろう。

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キユーピー ミートソース
フォン・ド・ヴォー仕立て
295g×12個
 話題の発端となったツイートで、一か月前に「お値段は同じ」とあるのは、在庫の調整のための価格ではないだろうか。アマゾンではまだダースで売っている。
 なお関連のツイートはTogetterにもまとめられている(参照)。
 話は以上。と言ってよいのだが、そもそもこんな誤解をされがちなことをなぜキューピーはしたのか?という疑問は残る。
 これはキューピーが説明している。「キユーピー 缶入りパスタソース 新たに2品を加え、ラインアップを拡充 同時にミートソース3品を改良し、容量を2人前へ」(参照)。

発売から55年、キユーピー「ミートソース」の歩み
 キユーピーは1959年に国内で初めてミートソースの製造・販売を開始しました。以来、半世紀以上にわたり缶入りのミートソースを作り続けています。パスタの食経験が少なかった頃には、ごはんやうどんにかけて食べるメニューを提案するなど、需要のすそ野を広げてきました。高度成長期に入り、外食文化が浸透しはじめる1965年には7号缶(295g)へ容器を変更し、休日に家族でパスタを食べる提案を進めました。時代が変化し、世帯人員が減少傾向にあることを見据え、このたび、容量を295gから255gに変更します。大人2人が食べ切るのにちょうど良いサイズの提案です。また、缶入りミートソースの最大の特徴である、レトルト加熱によるソースの煮込み感を引き出す製法はそのままに、肉の風味がさらに感じられるよう、炒めた玉ねぎを使い、調味料とスパイスの配合を見直す改良を加えました。

 つまり、キューピー側の説明としては、「時代が変化し、世帯人員が減少傾向にあることを見据え」ということだ。重要なのはこの見出しにあるように「容量を2人前へ」ということで、旧缶では「2~3人前が目安です」として、3人で1缶食べるという意味合いがあった。これは、1965年の世界でもあった。改めて言うまでもないが、この年は東京オリンピックの翌年である。
 その意味では、高度成長期後の縮小する日本に対応する変革がようやく、ミートソース缶に及んだと言ってもいい。
 さて、パスタソースとしての総量の絡み具合という点で、減量が図られ、それにほぼ対応して価格が下げられた(比較としては微妙に価格は上がった)が、問題は再び、内容構成である。
 特徴的なのは、カロリー低減に加えて、ナトリウム、つまり、塩分の増量である。新缶では総量で増えていて、食塩換算すると新缶で4.83グラムに相当する。
 これを二人で食べるなら、2.41g。一食分の塩分でみると、これを仮に三食食べても7.2g。これをどう評価するかだが、厚生労働省発表「日本人の食事摂取基準(2015年版)」の18歳以上の「男性は1日当たり8.0グラム未満、18歳以上の女性は1日当たり7.0グラム未満」にだいたい納まっている。
 まあ、塩分面から言って悪い食べ物とも言えない。
 逆に言えば、そこのあたりの天井値で塩分を上げて、濃い感じの味を出してみた新製品というのが主眼だったのではないだろうか。なお、参考までに、世界保健機関(WHO)の食塩摂取目標は1日5gである。
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キユーピー ミートソース
フォン・ド・ヴォー仕立て
255g×4個
 ああ、もう一つ結論めいた感想があった、全体量が減ったのは輸送などのコスト減ではないだろうか。あるいは、キューピーが獲得している棚に多くの商品を詰めるためではなかったか。
 
 

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