バイデン政権という汚点
バイデン政権はひどいものだったなあという印象が強いが、なかなか主要メディアは口を拭ってるものだと思っていた。が、BBCにそれなりの記事が掲載されていた(参照)まあ、そうだろう。それを参考に書いておきたい。率直にいって、老化したトランプ次期大統領もこうなりかねないのだから。
2025年初頭、ホワイトハウスの記者会見場でのバイデン大統領の姿は、歴史に残る象徴的なものとなった。言葉に詰まり、視線を彷徨わせる瞬間が繰り返され、聴衆の中に沈黙と不安が広がった。かつてオバマ政権時代に副大統領を務め、熱意ある演説で国民を鼓舞した「巧みなコミュニケーター」としての面影は、無惨なほどそこにはなかった。
バイデン氏の「年齢の影響」という疑念は、すでに2023年の大統領選テレビ討論会で最高潮に達していた。共和党候補として再出馬したトランプとの対決は、かつての「トランプvsバイデン」の再現として注目を集めたが、結果は老いたバイデン氏の予想内というより想定外の老化を見ることになった。バイデン氏は討論中、言葉を見失い、話題を取り違える場面が目立ち、支持者は顔を曇らせた。主要メディアはこの時点でもいい加減な報道をしていたが、現実は「この人物が再びリーダーであり得るのか」という疑念は、彼の発言を重視していた有権者を失望させた。その直後、支持率は歴史的な低水準である30%台にまで落ち込み、巻き返しのチャンスはもう訪れなかった。というか、カマラ・ハリス氏で一気に払拭しようとしたのだろうけど、端的に言って準備不足だった。
今だから言えることかもしれないが、大統領の特別顧問による報告では「記憶力の低下」が記され、「衰えた判断力」が政権運営に深刻な影響を与えていると結論付けられていた。この報告はバイデン支持派をも動揺させ、民主党内からも「新しい世代へのバトンを渡すべきだった」という声が高まった。右派メディアはバイデンの発言のミスや不明瞭な返答を集めたクリップを繰り返し放映し、共和党の攻撃材料となった。だが、右派報道だからという文脈では済まされないバイデン政権の指導力の欠如は、大統領選の行方を決定づけることになった。バイデンは演説で「自分の年齢は秘密ではない」と述べ、「結果を出す力はある」と自信を見せたが、国民の不安は解消されなかった。それを今もバイデン氏自身はもう認識できないほどだ。
老化が招いた国際的混乱
老化はバイデン大統領の「迅速な決断力」を蝕んでいた。特に国際問題での遅れは致命的だった。2021年のアフガニスタン撤退は、米国の威信を大きく揺るがせた瞬間として記憶されている。カブール空港が混乱と恐怖に包まれた映像は全世界を駆け巡り、混乱の中で多くの人命が失われた。この撤退自体は前政権で決定されたものだったが、軍事アドバイザーが提案した段階的な撤退プランを無視し、「無秩序な撤退」を選択したバイデンの判断は、米国の信頼を失わせた。「脆弱な撤退」として歴史に刻まれた決定は、彼の支持基盤にも打撃を与えた。
国内政策においても、パンデミック後の経済再建策は効果を発揮する前に物価高騰を招き、中産階級を苦しめた。インフレ対策を巡る決定の遅れは「一時的」と称されながらも、食品価格の急騰、住宅ローン金利の上昇といった生活必需品への影響を及ぼした。特に2023年のホワイトハウス会見で、インフレ率が上昇しているにもかかわらず「経済は安定している」と述べた発言は、専門家から「現実認識のずれ」と批判された。これにより市場は動揺し、多くの国民が経済政策への不信感を抱いた。
ウクライナ戦争に対する対応では、当初、迅速な支援を見せたバイデン政権だが、その後の遅延や資金支援策を巡る議論の長期化が、米国内の世論を分断した。「世界秩序のリーダー」としての役割は失われ、バイデンは国際社会における影響力を減じていった。ただ、これはそもそも無理があり、バイデン政権は引き際を読むべきだっただろうが、これにはバイデン家の問題も絡まっていた。
高齢リーダー時代
バイデン政権の教訓は、米国の有権者に「高齢リーダーの是非」を改めて問う機会を与えた。特にバイデンは再選を目指す過程で「トランプを倒せるのは自分しかいない」と主張し続けたが、結果として再選を果たせず、共和党の逆襲を許した。この敗北は、民主党内外に大きな失望をもたらし、「次世代の指導者育成」という課題を浮き彫りにしたが、すでに手遅れの状態にある。共和党も他人事ではないのだが。
高齢政治家のリーダーシップは米国だけの課題ではない。たとえばドイツのメルケル政権後や、中国や日本の高齢政治家問題など、他の先進国でも同様の懸念が浮上している。しかし米国の場合、特に政権運営における「象徴的なリーダー像」が求められるため、大統領の老化は対外的にも大きな影響を与える。ただ、こういうのもなんだが、それなりに刷新したはずのオバマ政権やマクロン政権も、メディアは口を挟むが失敗だったのだ。世界システムそれ自体が、もう結構前から、老朽化しているのである。
| 固定リンク