2019.06.16

オマーン湾でのタンカー攻撃について

 13日、ホルムズ海峡も近いオマーン湾で2隻のタンカーが攻撃された。1隻は日本の海運会社が運航するタンカーであり、また時期が安倍首相のイラン訪問に重なっていたことから、この2つの要因が背景化されて、日本でも大きく報道された。当然とも言えるが、誰が攻撃したのかということが話題になるなか、米国はイラン革命防衛隊によるものと名指しで非難し、英国もそれに追従する形となってきた。イラク戦争時を想起させるような空気も感じられる。
 実際は誰が攻撃したのか? 現状、国際世界の表向きとしては、判然としていない。私はイラン革命防衛隊によるものではないかと思う(イラン革命防衛隊はイランという国家が国家に収納できていない暴力である)。が、それは私の考えにすぎず、根拠となる事実はない。
 しかし国際外交的には、「何をもって事実とするか」ということがより問題である。つまり、①米国はイランによる攻撃である事実をどこまで知っているのか、②知っていてどこまで公開するのか、というのが、外交上の注意点になっている。現状では米国は、今回の攻撃に利用されたと見れる不発リムペットマイン回収の映像を公開している。
 今回の事件は、陰謀論を誘発しやすい構図にある。特に、今回の事件は、日本が背景化されたため、日本国内での推測が盛んになりがちだ。イラン革命防衛隊を疑う私も、単純にそこに主体があるというより、彼らがなんらかの情報操作を受けているのではないか、という印象論に近い推測を持っている。だが、それ以上、この推測を進める気もなければ、ブログに書く気もない。
 私としては、おそらくそれがブログの最大の価値であろう、同時代的なメモを残しておきたい。
 まず、日本を背景化することの重要性はどのくらいあるか?
 このことがまず気になり、事件後に海外情報に当たってみた。今回はそれが海外の人々への情報が気になったので、高級紙などよりもテレビニュースなどに注視した。その印象だが、日本での報道とは異なっていた。
 攻撃を受けた2隻のタンカーだが、①ノルウェーの会社が所有する「フロント・アルテア(Front Altair)」号、②パナマ国旗を掲げた「コクカ・カレイジャス(Kokuka Courageous)」号である。欧米のニュースでは、当然とも言えるが、地理的に近いノルウェーのタンカーに着目していた。また、もう1隻については外的にはパナマ国旗であり、日本の所有という指摘を焦点化しているものは見かけなかった。
 これが意味することは何か? 彼ら(主に欧州)にとっての今回の事件だが、「前回」の事件の後続が背景化されていたということだ。この前回の事件については、日本で報道がなかったわけではないが、あまり関心もたれてはいなかったようだ。
 その事件だが、5月12日、アラブ首長国連邦(UAE)のフジャイラ(Fujairah)沖でサウジ、UAEなどのタンカー4隻が攻撃を受け、船体に被害を受けたことだ。事後、米国は今回同様、イラン関与のアナウンスをしている。この事件は、その後の6月6日、UAEからも暫定調査報告が出され、事件の背景に「国家」の関与があるとしていた。が、イランとの名指しはしていなかった。
 今回の攻撃はかくして前回の攻撃とで文脈化されるほうが国際的には自然であり、その文脈のなかで、今後、フジャイラ沖がリムペットマイン設置との関連で焦点化されそうな印象がある。
 より強い印象で言えば、5月12日の攻撃は別の文脈に置かれる。
 5月9日の時点ですでに、米連邦海事局は、紅海やペルシャ湾海域でタンカーや米軍艦船がイランあるいは革命防衛隊のような代理勢力によって攻撃を受ける可能性がある旨、注意を喚起していた。米国側はこの時点で動向を掴んでいたわけである。そしてさらに、その全体的な対処として、5月10日、米国防総省は、地対空ミサイル「パトリオット」とドック型輸送揚陸艦1隻をこの地域に配備する発表をした。その後日を置かず、12日に攻撃が実現化し、以降は、さらにこの地域への米軍投入を強化していった。
 この文脈で見るなら、米国による威嚇で押さえ込んだいたはずの、タンカー攻撃が再開されたのが、今回の事態である。米国側としては押さえ込みの調子を監視しているような状況下であった。

 

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2019.06.15

安倍晋三首相のイラン訪問は失敗だったか?

 安倍晋三首相は14日午前、首相としては41年ぶりという歴史的なイラン訪問から、政府専用機で羽田空港に帰国した。この会談は失敗だったか?
 成功か失敗かと評価するには、どのような評価基準を持つかによる。
 端的に、どうであったら、大成功であったか? 
 日本のメディアでは、米国と仲介に失敗したという見解も見かけた。その視点の背景は、イラン核合意を再構築するということだろう。だが、これは原理的に難しい。というのは、合意を破棄したのは米国なのだから、それを求めるなら対象は米国になる。また、米国側の破棄をなだめるために、イランにミサイル開発を含め、全面的に米国の意向に従わせることができたら、というのであれば、それはすでに日本の外交ではないだろう。
 こうして具体的に考えていくなら、失点がないことが、成功というしかないだろう。その意味で、今回の安倍晋三首相のイラン訪問には致命的な失点もなく、そうであれば、成功というほかもないように思う。
 では、そんな可もなく不可もなしの訪問をわざとするのか、安倍首相の人気取りかというと、それも、違うだろう。なにも安倍首相を弁護するわけではない。今回の訪問は、イラン側の招待に応えたものだ。ロウハニ師自身が、「私の招待に安倍首相がお応えいただいたことを光栄に思います。両国は伝統的な関係を有していますが、今年は両国の外交関係樹立から90周年です。今まで私たちは何回も会談を行い、今回で8回目となります。日本政府をはじめ、安倍首相が2国間の関係強化に関心を持っていることを歓迎します」と述べている。そしてこのことは、最高指導者ハメネイ師に謁見できたことでイラン側の誠意が示されている。国際的には、日本が国際政治の主要プレーヤーであることを示してくれたことになる。ただ、これはイラン側としてもメリットは大きい。
 今回の会談の成否については、米国側からの評価も日本にとっては重要になる。これについては、トランプ米大統領の、やや否定的なツイートが注目される。

While I very much appreciate P.M. Abe going to Iran to meet with Ayatollah Ali Khamenei, I personally feel that it is too soon to even think about making a deal. They are not ready, and neither are we!


 そう難しい英文でもない。映画評論家の町山智浩氏は次のように訳していた。

トランプ「安倍総理がイランの最高指導者に会ってくれるのはありがたいが、自分としては交渉は時期尚早に思う。イランも私もまだ準備できてない!」

 私は、こう訳してみたい。

 私は安倍首相がイランに赴き、アヤトラ・アル・ハメネイ氏と会談することに大変に感謝しているが、個人的には、何か合意を得ようとするのは時期尚早だとも思う。彼らは準備できていなし、私たちもまだだ。

 "making a deal"は、町山氏の訳のようにシンプルに「交渉」としてもよいだろうが、私は、トランプのこのツイートの意図は、日本が何かイランと合意、とくに密約をしないように釘をさしたものだろうと考える。
 なぜか、日本には過去に、米国を困惑させた事例があり、また現在も背景があるからである。
 日本も世代代わりとなり、昭和の時代が忘れられようとしているが、1953年に日章丸事件があった。ウィキペディアを見るとそれなりに詳しい解説があるので見ておくとよいが、日本は西側諸国を出し抜いてイランと直接合意をむすんことがある。さらに日本とイランの友好史は戦前以前に遡る。
 昭和の時代が忘れられようとしても、日本にはイランと独自の信頼ルートがあり、しかもこれが、比較的近年までアザデガン油田に関連していた。また、2003年のバム地震でも日本はイランの支援を行っている。あと、表向きには語られていないが、悪魔の詩訳者殺人事件でも日本はイランに配慮していたようだ。
 こうした背景から、米国側としては、日本が米国を裏切ってイランと密約する懸念をもっていると考えてよいだろう。
 その面で言えば、今回の安倍首相のイラン訪問は、日本とイランに具体的な合意がないという点で、日米関係の外交上の成果があったとも言える。

 

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