2024.11.12

米国民主党の騒がしい日々

2024年の大統領選挙において、民主党は、あれから8年ということか、再び「自己崇拝」の罠に陥り、壮大な内紛を展開している。選挙戦の最終段階になってようやく党内で激しい議論が繰り広げられ、資金の使い方や広告戦略の失敗、そしてリーダーシップの欠如について多くの異論が噴出した。誰が責任を取るべきかについても各派閥で意見が分かれ、明確な合意が得られない。まあ、得られるわけもないが。このような内部の対立はメディアにも取り上げられ、民主党内の結束がいっそう揺らぐ結果となる。内部対立は深刻化する。民主党やその支持者は自らを「知的で正義」とか「公平で倫理的」とか見なし、他党との差別化を図ってきたが、その結果として内部で愚かな争いを続け、ドタバタを招いている。このような矛盾した行動は誰の目にも明らかであり、まさに、ありがちな滑稽さが浮き彫りとなった。

民主党じゃないだろのバーニー・サンダースは、民主党が労働者階級を見放したことが敗北の原因であると主張し、一方で不敗のナンシー・ペロシは、大企業の影響を受けすぎているとの批判に反論していた。また、オバマ上皇、いやいや、元大統領はバイデン王の撤退を促すなどの関与を小出しに見せたが、これが逆に党内の対立を激化させていた。主要メンバーたちは互いに責任を押し付け合い、選挙の敗北が「誰が悪かったか」を証明するための新たな舞台は、幕間狂言のように楽しい。次の幕が上がると、それなりに信じられるならばだが。内紛によって、民主党の結束はますます崩れていくのは、案外悲劇の始まりかもしれない。とりあえず源平合戦だ。ハリス陣営はバイデンを早期に「ベンチ」に追いやったことが敗因と声を上げるが、バイデン支持者からは「彼を下げた結果負けたのだから当然だ」と声があがる。

バイデン撤退の遅れと党内の混乱

バイデン大統領の撤退の遅れは、選挙戦略に大きな混乱をもたらした。早期に撤退していれば、民主党にとってどれほどの救いとなったかは計り知れない。ナンシー・ペロシもこれを批判しており、オープンな予備選が行われなかったことが大きな問題であったと指摘している。だが、バイデンは「タイミング」という言葉の意味を誤解したまま、その場に居座ることを選んだ。まあ、これにはもっと失礼な説明も与えることは可能なような気は駿河の茶の香り。

この撤退の遅れに関して、オバマ元大統領の関与も問題となった。オバマの元顧問たちはメディアを通じて、間接的にバイデンに撤退を促し、間接が陰険な効果を生んで、党内でバイデン支持派とハリス支持派の間に亀裂を生じさせた。撤退を進める過程で内部メモや公開声明を通じて圧力をかけたことも、党内の対立を助長し、それがハリス陣営をさらに弱体化させた。ということで背中をせっつかれたオバマがガウンを着て「救世主」として介入しようとしたが、うーん、やる気なかったでしょ、最初から。

労働者階級の離反とその影響

バーニー・サンダースは、民主党が労働者階級を見放し、大企業に迎合した結果、支持を失ったと批判している。まいどのことだけどね。「労働者の党」であるはずの民主党が、大企業との蜜月関係を優先し、労働者層との絆を失っていることは、まさに党のアイデンティティを揺るがす事態であるとかね。実際、労働者階級の不満は、サンダースが指摘する通り非常に深刻であり、「最低賃金の引き上げすら議会に持ち込むことができなかった」のは事実なんだけど、まあ、いつものことだよねという感じだ。自販機がなんか喋ったとして聞き入る人はないようなものだけど。

労働者階級からの支持を失ったことが、トランプの勝利にどれほど寄与したか。嘆息。民主党が労働者を取り戻すためには、まず彼らの目線に立って政策を考える必要があった。実際に彼らが選んだのは知的エリートの自尊心だった。例えば、労働者階級の切実な経済問題に対して、党のリーダーたちは大企業との協力関係を強調し、複雑な経済政策の重要性を説いた。頭のいい人の典型的なおバカな行為なんだがなあ、それ。このような姿勢は、労働者層からは現実から乖離したものと見なされ、彼らの生活に直接寄与する具体的な行動が欠けていた。この労働者層の離反がもたらす長期的なリスクについて、果たして党内でどれだけ真剣に議論されたのだろうか。まあ、議論はするだろう。対処はというと、まあ、わからん。

資金管理の失敗とその影響

カマラ・ハリス陣営は1億ドル以上の選挙資金を投入したが、その結果は期待を大きく裏切るものだった、いや、まさに期待通りだった。具体的には、ターゲティングの不十分な広告キャンペーンや効果的でない地域への資金投入した。だって、お金あるもん。特に、テレビ広告に対しては莫大な資金が投入された。そのメッセージはハリス支持層への共感を引き出せなかったが、まあ、そんなものだよ。選挙資金とみれば多くが無駄に費やされた。各地で開催されたキャンペーンイベントは過剰な演出に資金が費やされた。集客が少なく期待された影響を生み出せなかった。いいじゃん。そんなものだよ、地下アイドルだって。

「1億ドルを無駄にした」というエピソードは、民主党の資金管理の失敗を如実に物語っている。というか、結果論なんだけどね。結果を見るまで、誰も考えなかったのか。ハリス陣営は莫大な資金をテレビ広告に投入したが、ターゲティングができず、支持層にリーチすることができなかった。逆がトランプ陣営だった。選挙イベントの過剰な演出や、支持基盤とは関係の薄い地域でのキャンペーン活動に多額の資金が浪費されたが、まあ、それは悪いことでもないだろう。最終的に勝利につながる結果を生むことができなかっただけのことである。ハリス陣営に参加していた者からは「どうして1億ドルも使って勝てなかったのか?」という怒りの声が上がったが、使ったからだよ。なんらかの経済効果はあったはずだよ。

資金を集めすぎること自体が問題なのだ。大金を手にすると、その使い道を見失い、無駄遣いに走るのは、民主党に限った話ではない。しかし、それを見ている国民にとっては、まるで「滑稽なドラマ」として映っていたに違いない。滑稽に思わなかったのはトランプ陣営くらいだろう。

「滑稽なドラマ」といえば、ジョシュ・シャピロが副大統領候補として適任であったという声があったにもかかわらず、ハリスはティム・ウォルツを選んだとかもそうかも。シャピロはペンシルベニア州知事としての実績があり、その州での高い支持率から、重要なスイングステートであるペンシルベニアでの勝利が期待されていた。一方で、ウォルツの選定に対しては、彼の知名度の低さや、大規模な全国選挙での経験不足が批判されていた。この選定ミスが選挙結果に悪影響を与えた、かもしれない。。まあ、そうでもなかったかもしれない。結果が出なかっただけのことだよ。

 

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2024.11.11

台湾をめぐる有益な膠着維持

 台湾海峡を取り巻く緊張は、単なる地域紛争の枠を超えて、日本を含むグローバルな地政学的・経済的影響を持つ重大な国際問題へと発展している。特に注目すべきは、関係国による「曖昧戦略」が織りなす複雑な力学的均衡である。この戦略的曖昧性は、各国が直接的な軍事衝突を回避しながら、自国の利益を最大限確保しようとする現代の安全保障政策の縮図とも言える。
 中国の習近平国家主席は、台湾統一を中国共産党の憲法に明記し、2049年までの達成を目標として掲げている。しかし、2024年10月、台湾の頼総統は建国記念日の演説で、台湾は「主権国家」であり、中国が「母国」となることは「絶対に不可能」と明確に述べた。これに対し中国は「Joint Sword-2024B」などの軍事演習で圧力をかけているものの、全面的な軍事行動には踏み切れていない現状がある。その背景を現時点で再考する必要がある。

習近平政権の多重ジレンマ
 習近平国家主席は台湾統一を「国家の再興」の本質と位置づけている。しかし、武力による統一は、軍事的、経済的、そして政治的な観点から、予想以上の高いコストを中国に強いる可能性が高い。特に軍事的な観点では、台湾侵攻は第二次世界大戦のノルマンディー上陸作戦を上回る規模の水陸両用作戦を要する。しかも、現代の戦場の透明性の下では、中国軍の現在の水陸両用能力では不十分とされている。台湾の地形は70%が山岳地帯で、限られた上陸適地しかない。また、上陸可能な深水港も限られており、これらの地点は機雷や障害物、対艦砲台によって強固に防御されている。
 中国にとって悪夢ともいえる、1979年の中越戦争の教訓がある。この戦争で中国軍は、地形を熟知する決意の固まったベトナム軍との戦いで苦戦を強いられた。台湾も同様に、地形を活かした「ポーキュパイン」あるいは「ハニーバジャー防衛構想」を採用している。これは都市部での持久戦や非対称戦を前提とした抵抗態勢であり、米国から供与された最新鋭のF-16 Block 70戦闘機66機(総額76.9億ドル)や先進的な防空システムによって、その実効性は高まっている。
 経済的なリスクも深刻である。2024年の統計によれば、台湾の対中輸出依存度は30.7%に達し、台湾は中国との貿易で817億ドルの黒字を計上している。特に半導体産業では、台湾は世界の先端半導体生産の90%以上を占めており、この供給網の混乱は中国自身の産業発展に致命的な打撃を与えかねない。さらに、中国がロシアがウクライナにおいて仕掛けたような武力侵攻を行った場合、ウクライナに対するロシアへの制裁を上回る厳しい経済制裁に直面する可能性が高い。グローバル経済に深く統合された中国経済は、金融システム、技術輸出、主要産業への制裁によって深刻な打撃を受けることが予想され、現状では、ロシアのプーチン大統領がこの戦争に準備していたような準備が中国ではまた整備されないうえに、新生BRICSのとの高度のな外交戦略も必要になるが、中国はロシアの後塵を拝する状態にあり、「中華民族の偉大な復興」を掲げる習近平としては内政的な威厳が保てない。
 中国は台湾に対する軍事的圧力を維持しながらも、実際の武力行使は控えるという微妙なバランスを取らざるを得ない。習近平政権にとって、現在の経済的課題(不動産危機、国内債務問題、一帯一路の停滞)に直面する中で、台湾侵攻による追加的なリスクは避けたいシナリオとなっている。

「戦わずして勝つ」戦略
 このような状況下で、中国は伝統的に「戦わずして勝つ」という「三戦」戦略(世論戦、心理戦、法律戦)を展開するほかはない。これは、グレーゾーン作戦を通じて台湾に圧力をかけながら、実際の軍事衝突を避ける戦略である。この戦略の背景には、全面的な軍事衝突のリスクが中国にとって「受け入れがたい」レベルにあるという現実的な判断がある。
 米国のシンクタンク戦略国際問題研究所(CSIS)は、台湾侵攻のシナリオを24回にわたってウォーゲーミングで検証したが、その結果、ほとんどのケースで米国、台湾、日本の連合が中国の侵攻を阻止できるという結論に現状、達している。ただし、その代償は全ての当事者たちにとって極めて高いものとなる。中国の軍事戦略家である喬良退役空軍少将も、1999年に発表した著書『超限戦』によるものだが、武力による台湾統一は「コストが高すぎる」と警告している。ただ、現状はそれから四半世紀を経過しており、中国での認識が変化する可能性はある。

曖昧戦略がもたらす有利な膠着状態
 このような状況においては、自然的に各国の「曖昧戦略」が意図せざる安定をもたらしている。特に米国の対応は現状では評価できる。米国は台湾関係法、TAIPEI法、国防権限法という重層的な法的フレームワークを基盤に、戦略的曖昧性を進展させつつも維持している。2024年には台湾への11億ドルの防衛支援パッケージを承認し、さらに2025年予算では5億ドルの軍事支援を計画している。これにはHIMAR、ATACM、先進的な防空システム、対艦ミサイル等、台湾の防衛能力を実質的に強化する装備が含まれる。
 さらに米国は、フィリピンとの強化防衛協力協定(EDCA)に基づき、既存の5カ所に加えて4カ所の新たな軍事基地の使用権を獲得。これにより、台湾有事の際により迅速な対応が可能となっている。また、東南アジアでの海兵隊のローテーション配備(MRF-SEA)を2025年3月まで延長し、地域での演習と安全保障協力を強化している。
 日米豪印の4カ国による「クアッド」や、米英豪の安全保障協定「AUKUS」など、多国間の安全保障協力を強化しつつ、現代の「アナコンダ戦略」も可能であるかもしれない。この戦略は、サイバー戦、非軍事的な情報戦、経済的強制、そして軍事的封鎖などを組み合わせて中国を封じ込めることは有益である。マラッカ海峡など、中国の海上交通路(SLOC)の脆弱性を突く戦略は、中国側の軍事行動を抑制しうる。
 かくして中国を含め、各国の「曖昧戦略」は単なる現状維持政策ではなく、積極的な安定化メカニズムとして機能している。中国は軍事的圧力を維持しつつも実際の武力行使は控え、米国は防衛支援と同盟強化を進めながら直接的な軍事介入の可能性は明言しない。台湾は「ハニーバジャー防衛」を整備しながら、独立宣言は避ける。この三すくみの状態は、各国にとってリスクを最小化しながら利益を確保する最適解となっている。習近平政権が「2049年までの統一」を掲げる中で、この戦略的均衡を慎重に維持しつづけることが、中期的には日本を含め地域の平和と安定にとって極めて重要な意義を持っている。

 

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