イズベスチから見るトランプのウクライナ政策
3月18日のイズベスチヤがトランプ米政権のウクライナ政策を総括していた。ロシアから問題はどう見ているのだろうか(参照)。まず、ドナルド・トランプ米大統領は2期目のスタートから、ウクライナに対して一貫しない態度を見せているとしている。西側諸国を前に、彼は明確な立場を避け、曖昧さを保ってきた。例えば、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領に鉱物資源の開発協定を突きつけ、その場にいないゼレンスキー氏を批判した。さらに両者は直接対決し、トランプ氏は軍事援助をストップさせた。それでも、彼は「平和的解決が最優先」と口では主張している。この矛盾した姿勢はどこから来るのか。記事は2019年に遡るエピソードを背景として挙げている。当時、トランプ氏は初任期中、ウクライナにジョー・バイデン氏の息子ハンターの汚職疑惑調査を要求したものだった。両首脳の電話会談で話題に上ったこの件は、支援との交換条件と報じられたが、結局、米国は資金を出し続けたものの調査も実現しなかった。この騒動は民主党の弾劾攻勢にまで発展し、トランプ氏に苦い記憶を残した。今のウクライナへの態度は、その過去の影を引きずっているようだ。
ゼレンスキーとの衝突
トランプ氏とゼレンスキー氏の関係がこじれたきっかけを、3月18日のイズベスチヤはこう振り返っている。2024年の米大統領選挙中、ゼレンスキー氏は激戦州ペンシルベニアの砲兵工場を訪問したが、そのおり、民主党のジョシュ・シャピロ知事とボブ・ケイシー上院議員を伴い、トランプ氏の紛争解決能力に疑問を投げかけていた。さらに、副大統領候補J・D・ヴァンス氏を「過激」と切り捨てる発言まで飛び出した。共和党側はこれを選挙への介入と受け止め、トランプ氏自身は個人的な遺恨をゼレンスキー氏に抱いた。再選を果たした後、彼はゼレンスキー氏と会談し、中立を装いつつ和平への意欲を示したが、具体策は一切明かされなかった。強硬派として知られるキース・ケロッグ氏を特使に任命し、モスクワとの交渉を進めたが、ウクライナ側へは冷ややかだった。その後、トランプ氏はウクライナ軍の維持費の高さを理由に、再び鉱物採掘協定を押し出した。しかし、ワシントンでの調印式は口論で決裂した。トランプ氏は「米国を軽視している」とゼレンスキー氏を非難し、謝罪を要求した。この衝突が引き金となり、ウクライナへの軍事援助は完全に停止し、停戦協議に応じるまで支援も情報も渡さないと突き放した。トランプ氏がウクライナから一歩引いたのは、この一連の経緯が大きいだろう。
ロシアとの対話
イズベスチヤはトランプ氏がロシアのプーチン大統領との電話会談を興味深く注視している。ウクライナ側はこれに強く反発したが、トランプ氏は動じなかった。彼はウクライナ支援の負担を欧州に丸投げするつもりだと、批判に答える形で示唆した。
イズベスチヤ記事は、トランプ氏の頭の中にある地政学的ビジョンをこう読み解く。ロシア、米国、中国の三大国が世界のバランスを握るべきで、ウクライナはその構図に不要だというのだ。この考えは、ウクライナを支えるグローバリスト勢力と真っ向から対立する。トランプ氏は彼らの価値観を共有せず、米国の利益だけを守る多極体制を模索している。注目すべきは、軍事援助停止は公式に発表せず、匿名ホワイトハウス関係者を通じて漏らした点だ。これは、方針をいつでも変えられる余地を残している証拠だろう。記事はさらに、トランプ氏がウクライナの敗北を気にせず、むしろ欧州グローバリストの崩壊を待っていると分析している。ハンガリーのオルバーン首相を盟友と見なし、ウクライナ支援に懐疑的な右翼が欧州で台頭すれば、ウクライナへの関心はゼロになるかもしれない。中国への対抗を最優先とするトランプ氏にとって、ウクライナは単なる「邪魔者」に映っている。
トランプが導くウクライナの未来
トランプ氏のウクライナ政策にはその個性が色濃く反映されていると、3月18日のイズベスチヤは指摘する。彼は派手な振る舞いで注目を浴びるのが好きで、リスクを冒す冒険心も持ち合わせている。選挙戦で規範を破りまくった姿勢は、ビジネスの世界での成功を政治に持ち込んだものだ。ゼレンスキー氏との口論では、感情的な不安定さが炸裂した。相手を辱めることに躊躇せず、負けることを我慢できない性格が露わになった。ただ、冷静な相手には弱い一面もあるという。ウクライナへの軍事援助全面停止が検討される中、トランプ氏は欧州や民主党からウクライナを「買収」しようとしたが、ゼレンスキー氏の抵抗で失敗に終わった。西側諸国は両者の連携を望まず、関係修復は遠のいている。2年後の議会選挙を控え、トランプ氏は中国問題に全力を注ぐつもりなので、ウクライナはもやは苛立ちの種でしかない。
イズベスチヤ記事は、今回の分析は、政治学者ウラジミール・モジェゴフ氏と心理学者イリーナ・スモリャルチュク氏の見解を交え、トランプ氏の行動が予測可能なパターンに従っていると締めくくっている。
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